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第02回:花粉症完全攻略マニュアル
( 2003年04月02日 掲載 )
■ 花粉症が増加した背景と今後の見通し ■
戦後、建材・治水などの目的で全国の国有林に北海道,沖縄を除く広い範囲スギが植林された。1960年代後半より、花粉生産力の高い樹齢30年以上のスギ林面積が多くなったことにより、1970年代前半より患者数が急増している。スギ花粉症患者の7割がヒノキ花粉症患者でもある。国土の7割を占める森林面積は2,500ヘクタール、その内人工林が100ヘクタール。その44%をスギ、24%をヒノキが占めている。現在スギの植林は行われていないが、ヒノキの植林は今も行われている。樹齢20年を超えると花粉の生産量が高まる。ヒノキは樹齢が若い木が多く、今後飛散数が増加すると予想されており、事実ヒノキ花粉症は急速に増加している。 ■ 2003年スギ花粉飛散情報 ■
■ 花粉飛散量と花粉症の症状の関係
![]() 関東では、例年スギ花粉飛散は1月中旬から初観測され、連続して花粉飛散を観測し始めるのは2月10日前後が多い。その年により異なるが、3月初旬頃に花粉飛散のピークを迎え、4月初旬の桜が開花する頃には花粉飛散が終息する。その後3月下旬からヒノキ花粉が飛散を開始し、4月上旬に桜の開花に合わせるように飛散の最盛期を迎える。 近年、スギ花粉症患者の65%がヒノキ花粉に対する抗体も保有していることが知られている。スギ花粉飛散が終息しはじめる3月中旬から下旬に症状が一旦軽減する傾向が認められるものの、多くの患者はヒノキも共通抗原として認識されているため、ヒノキ花粉飛散の増加に伴い症状が再度悪化する。ヒノキ花粉飛散が終息する4月下旬から5月上旬の連休頃まで症状が遷延することがしばしば経験される。 ■ 主な花粉症原因植物の開花期 ■
同じ花粉でも、地域によって飛散期に差がある。いつ頃、どんな花粉が飛ぶのかを知ることが大切と言える。また、スギ花粉症有病者は北海道と沖縄にはほとんどなく、太平洋側が多くなっている。![]() ![]() ■ 地域別・年齢層別の有病率 ■
全国調査によるアレルギー性鼻炎の有病率は、通年性アレルギー性鼻炎18%程度。スギ花粉症16%。スギ以外の花粉症10%程度。地域ブロック別で見ると、花粉症有病者は北海道と沖縄にはほとんどなく、太平洋側が多くなっている。 年令による差としては、花粉症は30~40代に多いが、最近10代の増加が目立つ。通年性は10代に多い。 ![]() ![]() ■ アレルギー性鼻炎の種類(抗原別) ■
■ どんな症状があるか ■
スギ花粉が鼻に入ってくるとくしゃみで追い出し、鼻水で洗い流し,鼻詰まりで中に入りにくくする。目的にかなった反応だがこの不快な症状は病気と言わざるを得ない。
■ どうして花粉症が起こるのか ■
![]() (1)感作 花粉が鼻に入ると、体の中に抗体(IgE)がつくられ、これが鼻の粘膜の肥満細胞というアレルギーを起こす細胞に着いて感作が成立する。 ↓ (2)発症 感作された人の約50%の人に症状が発現する。 感作されるかされないかは体質によって決まる。スギやダニでは約50%の人が感作されている。どのような人が発症するかは、内的因子(遺伝的素因),外的因子(大気汚染、花粉飛散量など)の諸説があるが現在のところはっきりとは証明されていない。 ■ 花粉症の症状が起こる仕組み ■
![]() 抗原である花粉が体内に入ると、それに対抗する抗体が作られる。花粉症の人では花粉に接触するたびに抗体がどんどん増え、鼻や目の粘膜内にある肥満細胞と結合する。抗体がついた肥満細胞は、花粉が入ってくるたびにどんどん増え、ある一定の量になると、花粉に反応してまずヒスタミン、次いでロイコトリエンを放出する。ヒスタミンは鼻の粘膜の表面にある三叉神経を刺激する。この神経は知覚神経で、くしゃみ、鼻水、かゆみを引き起こす。一方、ロイコトリエンは血管に働きかけて、血管を広げたり、血管から水分がにじみ出てくるのを促す。その結果、粘膜が腫れて水膨れを起こし鼻詰まりを起こす。 なお、ヒスタミンやロイコトリエンが放出される仕方やその量は、人により異なり、それにより「くしゃみ、鼻水型」「鼻詰まり型」「混合型」など症状の違いが現れる。くしゃみ、鼻水と鼻詰まりでは起こり方が違うので効く薬も違ってくる。 ■ アレルギー反応のプロセス ■
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■ 診断方法 ■
■ アレルギー性鼻炎とその他の感染症の鑑別 ■
参考:奥田稔:鼻疾患, 北村武編:耳鼻咽喉科学, P343, 文光堂, 東京, 1985.
鼻風邪の初期にはくしゃみ、水性鼻汁がみられるので鑑別しにくい。かぜでは数日のうちに粘膿性鼻汁となり1~2週で治癒する。鼻汁中に好酸球はなく脱落上皮細胞があり、数日後好中球が増加する。 ■ 花粉症の重症度 ■
「2002年版鼻アレルギー診療ガイドライン」より抜粋
重症度はすべて自覚症状を基準とする。くしゃみや鼻水の程度は1日にくしゃみをした回数や鼻をかんだ回数で判定。鼻つまりは手で口を塞いでみて鼻呼吸だけにした場合どのくらい支障が生じるかで判定する。 花粉症の症状は混合しているケースが多く、その場合症状の重い方を中心にする。 ■ 花粉症の治療 ■
花粉症の治療は、以下の4つの治療法にて行います。
抗原の回避は必ず行う治療法。薬物療法は重症度と病型の組み合わせで決まる。減感作療法については、スギの抗原は日本で唯一標準化されている。なお、手術についてはシーズン中は避けるべきとされている。 ■ 花粉の除去と回避 ■
■ 花粉症の薬物治療による症状ベースラインの上昇 ■
![]() →ベースラインより上の部分は併用療法が必要となる。 ■ 治療薬の選択 ■
![]() 薬物療法では2週間を目安にして症状の特徴と重症度を確認しながら、その時点の症状に合わせた薬にかえる。使われる薬は大きくわけて5種類ある。 初期に使う
遊離抑制薬
→肥満細胞からのヒスタミンやロイコトリエンの遊離を抑える。 →連用により改善率が上昇 →効果がマイルドなため臨床効果発現が遅い。 →鼻閉にもやや効果ある。 →副作用が比較的少ない。眠気が無い。 主にくしゃみ、鼻水を抑える
抗ヒスタミン剤
→ヒスタミンが神経に作用するところ(受容体)をブロック。 古いタイプは10~20分で効果。眠気口渇あり。緑内障,前立腺肥大,喘息には禁忌 新しいタイプは1~2日で効果。副作用があまりない 鼻詰まりの薬
抗ロイコトリエン薬
血管収縮薬
点鼻薬
→数分で効果。使い過ぎると鼻詰まりが強くなるため1日1回寝る前に使うのが基本。 症状が強いときに使う薬
ステロイド
→点鼻は1~3日、内服ではその日のうちに効果。内服は2週間に限定。 ■ 薬を選ぶめやす ■
症状がでる前から治療を始める場合(初期治療)
→第2世代抗ヒスタミン薬 ケミカルメディエーター遊離抑制薬
■症状が強くなってから治療を始める場合(導入療法)
→経口ステロイド薬(1週間以内でやめる)
局所ステロイド薬 第2世代抗ヒスタミン薬 良くなった症状を維持するために(維持療法)
→第2世代抗ヒスタミン薬,局所ステロイド薬,ケミカルメディエーター遊離抑制薬
眼の症状が強い場合
→抗ヒスタミン薬またはケミカルメディエーター遊離抑制薬の点眼薬
ステロイド薬の点眼薬 ※初期療法:どちらかを例年の症状の程度により選択し、花粉飛散終了まで続ける。 ※導入療法:経口ステロイドは最長2週間で中止。他2つのうちのどれか1つまたは両方を続ける。 ※維持療法:どれか1つまたは複数を花粉飛散終了まで続ける。 ■ 減感作療法とは ■
花粉のエキスを注射して体を花粉に慣れさせる方法で、唯一長期寛解や治癒が期待できる。約70%に有効。 薬物療法が効かない人、副作用のため薬を使えない人が主な対象で、完全治癒率はおよそ20%。問題点としては、3年以上定期的に注射を続ける必要があり、効果発現まで長期を要することと、まれにアナフィラキシーショックを起こすことがあることである。専門知識のコーナー
注射抗原エキスに対するIgE抗体の産生抑制(抑制T細胞誘導など)、局所浸潤リンパ球亜分画の変化や遮断抗体の産生亢進などの免疫機序が考えられ、特に,局所粘膜型肥満細胞の減少,ヘルパーT細胞1型と2型のバランスの変化による放出サイトカインの種類と量の変動が強調されている。
実施法:初回注射は皮内反応閾値濃度かその1/10。濃度を上げるときは皮内テストを行い紅斑50ミリ以上では慎重に実施し30分間は監視下におく。 ■ 手術療法について ■
第一の目的は、鼻詰まりの改善にある。 保存的治療で改善が見られず、血管収縮点鼻薬に対する反応が悪いものに適応される。方法としては、下鼻甲介切除、レーザー手術、APC(アルゴンプラズマサージェリー)治療、凍結手術等がある。 くしゃみ、鼻漏は比較的薬物療法に反応するが,結合織の増生した粘膜の肥厚には効果が少ないため保存的治療が無効のときは手術を考える。但しシーズン中の手術は控えた方がよい。 ※関連トピック:猫アレルギーを減感作療法で治療できますか? ※関連トピック:鼻炎の治療で、レーザー治療は行っていますか? ■ 妊婦の治療について ■
原則として薬物を用いることは避ける。 まず、温熱療法、入浴、むしタオル、マスクの着用を試みる。薬無しの鼻詰まりの治療法としては、ジョギングなどの散歩よりやや激しい運動があげられる。血中のノルアドレナリンをあげ血管を収縮させて鼻の通りをよくすると言われている。 入浴、蒸しタオルをあてるのも有効。室内は湿度50~60%、温度22~24%が最適。低温・乾燥で腫れやすい。また、湿ったガーゼを入れたマスクが有効。 専門知識のコーナー
妊娠4か月以降で、どうしても薬が必要な場合は、局所用薬を最少量で用いる。 アタラックス、タベジール、ポララミン(以上第1世代抗ヒスタミン薬)、インタール点鼻では多数例で有害の証明がない。また、鼻用局所ステロイド薬の胎児への毒性もヒトでは報告が無い。
[TEXT by 米納昌恵, 筑波記念病院 耳鼻咽喉科]
※執筆者の所属は、執筆当時のものです。
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