筑波記念病院ロゴマーク 住所と電話番号
ドクターの知恵袋 ドクターの知恵袋 キービジュアル
第03回:神経内科って何? -ふるえはパーキンソン病のサインとは限らない-
( 2003年05月07日 掲載 )

■神経内科とは?
よく神経内科は、どんな病気を診るところなのか、と聞かれることがあります。特に、間違われやすいのが精神科、精神神経科、神経科、心療内科などです。これらの科は精神科の仲間で、気分の変化(うつ病や躁病)、精神的な問題を扱うところです。また、心療内科は精神的な問題がもとで体に異常を来たしたような病気を扱う科で、もともとは内科の先生方が多いですが、一部精神科の先生方も診療しています。

神経内科は、これらの科と異なり、精神的な問題からではなく、脳や脊髄、神経、筋肉に病気があり、体が不自由になる病気を扱います。症状としては、頭痛、しびれやめまい、勝手に手足や体が動いてしまう、うまく力が入らない、歩きにくい、ふらつく、つっぱる、むせ、ろれつがまわらない、ひきつけやけいれん、ものが二重にみえる、ものわすれ、意識障害などたくさんあります。これらの症状がでてきた場合、まず、神経内科でどこの病気であるかを見極めることが大切です。その上で、骨や関節の病気がしびれや麻痺の原因なら整形外科に、手術が必要な脳の病気であれば脳神経外科に、精神的なものであれば精神科にご紹介することができます。眼科や耳鼻科の病気が含まれている場合もあります。

■代表的な神経内科の病気
代表的な神経内科の病気としては、頭痛、脳卒中、痴呆、てんかん、パーキンソン病、不随意運動などがあります。不随意運動というのは、手足がかってに動いてしまう症状のことです。中でも、手などのふるえ(医学用語では振戦ともいいますが)は頻繁にみられる病気ですが、『私はパーキンソン病ではないでしょうか』と非常に心配して受診される方が多く見られます。今回は、このふるえについて、一口にふるえといっても、いろいろな種類があること、それらの違い、パーキンソン病とそうでないものとの見分け方、各々の治療法などについてお話したいと思います。

私は、神経内科、という科をやっておりますが、よく聞かれますのが、 神経内科というのは、そもそも、どんな病気を診るところなのか、ということです。科の名称が紛らわしいためと思いますが、特に、間違われやすいのが精神科、精神神経科、神経科、心療内科などです。これらの科は、精神科の仲間で、気分の変化や精神的な問題を扱う科です。また、心療内科は精神的な問題がもとで体に異常を来たしたような病気を扱う科で、もともとは内科の先生方が多いですが、一部精神科の先生方も診療しています。

まず、下の図をごらんください。

■神経内科でよく見られる症状
神経内科は、精神的な問題からではなく、脳や脊髄、末梢神経、筋肉に病気があり、体が不自由になる病気を扱います。これはつまり、体を動かしたり、感じたりすることや考えたり、覚えたりすることが上手にできなくなるような場合です。そのような場合、まず神経内科で、神経系のどの部分の、どのような問題があるのか、を見当をつけ、その上で、骨や関節の病気がしびれや麻痺の原因なら整形外科に、手術が必要な脳の病気であれば脳神経外科に、精神的なものであれば精神科にご紹介することができます。眼科や耳鼻科の病気が含まれている場合もあります。
それら以外の、脳神経系に起因する、外科的治療が必要でない、内科的な病気全般が神経内科で扱う病気、と考えていただいてよろしいかと思います。

◆神経内科でよく見られる症状
頭痛、しびれ、めまい、手足や体がかってに動いてしまう、ふるえ、うまく力がはいらない(脱力)、歩きにくい、ふらつき、つっぱり、むせ、ろれつがまわらない、ひきつけ、けいれん、ものが二重にみえる、ものわすれ、意識障害

具体的には、症状としては、このように、頭痛、しびれやめまい、勝手に手足や体が動いてしまう、うまく力が入らない、歩きにくい、ふらつく、つっぱる、むせ、ろれつがまわらない、ひきつけやけいれん、ものが二重にみえる、ものわすれ、意識障害などたくさんあります。これらの症状が出てきた場合、まず全身をみられる神経内科でどこの病気であるかを見極めることが大切です。その上で、必要であれば、他の科にご紹介する、というのが望ましいと思います。

■振戦がみられる主な疾患
ふるえ、医学用語では振戦、といいますが、振戦の主な原因としては、ここに挙げたような疾患があります。まず、本態性振戦というのは、振戦を唯一の症状とする疾患です。家族歴のある方が一部にみられ、その場合、発症年齢は20-50歳くらいですが、家族性でない方の場合、40-60歳が多いです。

◆振戦がみられる主な疾患
本態性振戦(振戦を唯一の症状とする原因不明の神経疾患)、パーキンソン病、甲状腺機能亢進症、薬物中毒(β交感神経作動薬、抗うつ薬、向精神薬など)、脳幹の脳血管障害(脳梗塞、脳出血)(画像診断が重要。比較的まれ)、アルコール性小脳疾患

■本態性振戦の発症頻度
これは、住民健診で本態性振戦の発症頻度を調べたものですが、このように40歳以上の約6%、高齢者の約10%に認められる、非常によく見られる疾患であることがわかります。また、年齢とともに、頻度が増加していきます。高齢者にみられるものを老人性振戦とよぶことがありますが、これも本態性振戦にあたります。


クリックすると大きなイメージを表示します


※方法・対象 :熊本県内の某地区の40歳以上男女(男性507名、女性729名)を対象とした住民健診において手指の開排保持を基準として振戦を認める人を抽出した。なお、パーキンソン病、甲状腺機能亢進症、神経原性筋委縮、アルコール嗜好、高度な肝・腎機能障害などによる症候性振戦は除外した。

■本態性振戦とパーキンソン病の相違
本態性振戦は、振戦以外の障害はなく、進行もしませんので、命にかかわるというような疾患ではありません。ただし、あとで詳しく述べますが、日常生活上支障を来たしたり、人前で恥ずかしさを感じるなどの問題がある場合には治療が必要になります。
一方、特に高齢者で、これと区別しなければならない疾患に、パーキンソン病があります。

◆本態性振戦
・姿勢の保持や、動作時にみられる速い振戦 (4-12 Hz)
・主に上肢や頭部に、ときに 声にふるえがみられる
・他の神経症状がない
・精神的緊張で増強し、飲酒(アルコール)により軽快することがある

◆パーキンソン病
・静止時(安静時)にみられる遅い振戦 (4-7 Hz)
・上肢、下肢(頭部はまれ)
・動作緩慢、筋固縮などの パーキンソン症状を伴う
・精神的緊張で増強する

これは、本態性振戦とパーキンソン病の振戦の見分け方を示したものです。
まず、本態性振戦は、手を前方に挙上するなど、ある姿勢をとったときや動作をするときに顕著になるふるえであることが特徴です。それに対して、パーキンソン病では、ひざに手をおいているときなどの静止時、安静時に最もふるえが強く、手を前方に挙上したり、動作をする際には、むしろ、ふるえが抑制されます。
また、本態性振戦では頭部を左右に細かく回旋するようなふるえがみられることがありますが、頭部のふるえは、パーキンソン病では極めてまれです。
ふるえそのものも、パーキンソン病では本態性振戦よりややゆっくりしたふるえです。
それから、本態性振戦では他の神経症状はみられませんが、パーキンソン病では動作緩慢、筋固縮、小刻み歩行などのパーキンソン症状が認められることも、鑑別点になります。ただ、パーキンソン病の初期には、ふるえが唯一の症状である場合も多いことから、ふるえの特徴から両者を区別することが大切になって参ります。もう1ついいますと、長年本態性振戦であった方のうち、ごく一部にパーキンソン病を発症していく方もおられますので、注意が必要です。
その他、本態性振戦では飲酒によってふるえが抑制されることがあります。
また、両疾患とも、人前など、精神的緊張で増強することは共通です。

■振戦の観察法


※クリックすると大きなイメージを表示します

次に、今、述べました姿勢時振戦、動作時振戦、静止時振戦を図示したものをごらんください。このように、腕を前方に水平に挙上した姿勢などで、最もふるえがみられることを姿勢時振戦といいます。また、指で鼻を指差すなどの動作で、目標である鼻に指が近付くほどふるえが強くなるような症状を動作時振戦といいます。これらは、本態性振戦の特徴です。それに対して、手をひざに置いた状態でふるえが目立つ症状を静止時振戦といい、パーキンソン病に特徴的です。

■振戦の観察法(2)



クリックすると大きなイメージを表示します

また、字を書くとき、コップや茶碗をもつときなどに手がふるえるのも、本態性振戦の特徴であり、診察時は、書字やコップをもつ動作、また衣服の着脱をする際の動作などを観察致します。

■振戦がみられる主な疾患
振戦がみられるほかの疾患としては、甲状腺機能亢進症があり、振戦がみられる場合、一度は甲状腺ホルモンの測定が必要です。また、薬物の副作用でおこる振戦も、日常診療で、かなり頻繁に認められます。原因となりうる薬としては、β交感神経刺激薬がありますが、これは気管支喘息の治療薬としてよく使われるものです。その他、抗うつ薬、抗精神病薬などがあり、このような薬をのんでおられる場合には、薬の副作用を考慮する必要があります。とくに、ふるえが、いつの間にかだんだんに出現したのではなく、比較的急に出現してきた、といようなときには、薬剤性のふるえを疑います。

脳幹の血管障害つまり脳梗塞、脳出血の症状として、一側の上肢に振戦がみられることもありますが、それほど頻繁にみられるとはいえません。また、運動麻痺や感覚障害などの症状を伴っているのが普通です。それから、血管障害の場合、画像診断が診断の助けになります。

その他、慢性アルコール中毒のアルコールからの離脱による振戦もあります。特殊な小脳の変性疾患でみられる振戦もあり、これは企図振戦といって、目標にに到達するときに大きくふるえて目標からそれるような異常を指します。小脳性の運動失調など、他の神経症状を伴うので、ふるえのみ見られる疾患とは、容易に判別できると思われます。

◆振戦がみられる主な疾患
本態性振戦(振戦を唯一の症状とする原因不明の神経疾患)、パーキンソン病、甲状腺機能亢進症、薬物中毒(β交感神経作動薬、抗うつ薬、向精神薬など)、脳幹の脳血管障害(脳梗塞、脳出血)(画像診断が重要。比較的まれ)、小脳疾患、慢性アルコール中毒(離脱時)

■本態性振戦の治療
次に、振戦の治療についてお話します。本態性振戦は、まず、最初にお話しましたように、それ以上進行もせず、命にかかわったりすることもない、良性の疾患です。ただし、緊張すると増悪するため、人前で字を書いたりする際に手がふるえて恥ずかしい、そのために人前に出ないようになってしまった、などの訴えをよく聞きます。また、日常生活で、箸や茶碗がふるえてうまく食事ができない、あるいは手作業をしている人では手がふるえるために、仕事に差し支える場合があります。このように、日常生活や職業、社会生活に支障を来たす場合に対しては、治療が必要になります。

治療としては、まず原因になりうる薬剤をのんでいる場合には、中止可能なものは中止します。甲状腺機能亢進症があれば、もとの疾患の治療をまず開始します。
本態性振戦と診断された場合は、β-ブロッカーが有効なことが多いですが、不安や緊張が大きく関係している場合には、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬を使います。β-ブロッカーは、もともと本態性高血圧や狭心症、不整脈に使われている薬ですが、心不全や糖尿病、気管支喘息がある方にはそれらを悪化させることもあるため、使用できないことがありますし、高齢者では徐脈、めまいなどの副作用が起きやすく、注意が必要です。副作用で使用できない場合には、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や抗けいれん薬のプリミドンなどを中心に治療します。薬剤治療で効果が認められない場合は、振戦がおきている側と反対側の視床中間核というところを破壊する、脳の外科手術を行うこともありますが、あまり一般的な治療とはいえません。

一方、パーキンソン病の振戦については、今回はくわしくは述べませんが、L-DOPAなどの抗パーキンソン病薬がもっとも有効です。

◆薬物治療
・B-ブロッカー(アロチノロール、プロプラノロール)
・ベンゾジアゼピン系抗不安薬
・抗てんかん薬(プリミドン)

◆外科治療
脳視床中間核破壊術

■まとめ
それでは、振戦についてのお話のまとめをお示しします。
ふるえ、すなわち振戦には、大きくわけて、ある姿勢をとったときや動作時にみられるものと、静止時にみられるものと、2つあります。
前者のほとんどは本態性振戦であり、これは進行もしないし、命にかかわることもない、良性の疾患です。 ただし、薬剤の副作用や甲状腺の病気が原因になっている場合があるので、それらを考慮しなければなりません。
もし、日常生活動作、また職業、社会生活に支障を来たす場合には治療が必要になり、いくつかの治療薬が知られております。
そして、後者の代表が、パーキンソン病であり、これは他の神経症状や経過で区別することができます。治療は、抗パーキンソン病薬が有効です。

◆まとめ ふるえ、すなわち振戦には大きく分けて2つ、姿勢時・動作時振戦静止時振戦がある 「姿勢時・動作時振戦」のほとんどは本態性振戦であるが、薬剤性、甲状腺疾患を除外しなければならない 本態性振戦は、日常生活動作、職業、社会生活に支障を来す場合には治療する 「静止時振戦」の代表がパーキンソン病であり、他の神経症状の有無、経過などでも区別できる。

今回は、神経内科という科のご説明と、振戦について簡単ではありますが、お話しさせていただきました。心あたりの症状などある方は、ぜひ、一度、神経内科に相談にいらしてください。

※執筆者の所属は、執筆当時のものです。

前のコラム:第02回:花粉症完全攻略マニュアル

次のコラム:第04回:高度先端医療を支えるMEとは?


他にもたくさんの記事があります。
トップページ(全記事を掲載)も合わせてお読みください。