第05回:人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス術について
( 2003年07月03日 掲載 )
■狭心症や心筋梗塞について
狭心症や心筋梗塞についてお話をしたいと思います。日本でも生活習慣病と言われる、高血圧・高脂血症・糖尿病・高尿酸血症などが原因で、冠動脈(心臓をかんむりのように取り囲んで心臓の筋肉へ栄養を送る血管のこと)の動脈硬化症が増えてきています。精神的なストレスや肥満・喫煙なども原因になります。欧米人に比べると日本食を食べていたためか、以前は日本人には少なかったのですが、近年、食生活の欧米化とともに日本人にも多く見うけられるようになり、現在では心臓病の中で最も多い病気です。
■治療法について
治療法としては、薬物療法・カテーテル(血管の中に入れる管のこと)を用いた経皮的冠動脈形成術(PCI)・外科手術による冠動脈バイパス術(CABG)などがあります。冠動脈病変の程度や全身の状態によって、これらの中から適切な治療法が選択されます。
ところで、冠動脈バイパス術(CABG)は約40年前から行われており、心臓外科の手術の中でも、最も安全に行われる、外科手術として確立した手術方法の一つですが、人工心肺装置を使用して心臓の拍動を停止させて行われるものです。このため、人工心肺装置を使用することに伴う、生体の異物反応としての一定のリスクを内包します。手術そのものの技術や方法はほぼ安定し、成績が良くなってきましたが、そのため、かえって人工心肺装置を使用することに伴うマイナス面が際立ってきました。たとえば、脳梗塞などの脳合併症を起こすことがある、人工呼吸の期間が長くなることがある、免疫力が低下するため感染に弱い、入院期間が長くなることがあることなどです。
このような状況の中で、近年人工心肺装置を使用しないで心臓の拍動を維持したまま、冠動脈バイパス術が行えるようになりました。 この手術法を心拍動下冠動脈バイパス術(Off-Pump CABG)と言います。ここ数年で、スタビライザーといって動いている心臓に対して、吻合部位の心臓の動きを止める手術器具の改良がみられ、手術の方法も確立してきております。この手術方法は血管を吻合する技術は少し難しく、全例に行い得るものではありませんが、メリットは、人工心肺を使用しないため手術時間や人工呼吸器の使用時間が短くなり、入院期間や医療費が少なくて済みます。
患者様にとっては社会復帰も早まりますので経済的にも社会的にも負担が減ります。当院では、すでに少しずつこの新しい方法で冠動脈バイパス術を行ってきましたが、これまでの結果は良好でしたので、これからは対象となる患者様をさらに増やして行く方針でおります。
■今後の心臓病治療
未来の心臓病の治療法は、遺伝子治療や内視鏡手術と遠隔操作を組み合わせたロボット手術など、さらに新しい技術が次々と導入されていくことになるでしょうが、現時点での当院の心臓手術の状況をお知らせしました。何かございましたらお気軽に御相談下さい。
[TEXT by 小石沢 正 筑波記念病院 心臓血管外科]
※執筆者の所属は、執筆当時のものです。
■前のコラム:第04回:高度先端医療を支えるMEとは?
■次のコラム:第06回:下肢静脈瑠とは?
他にもたくさんの記事があります。
トップページ(全記事を掲載)も合わせてお読みください。
|