■下肢静脈瘤について
おもに"あし"(下肢)の表面に青く見えている血管(静脈)が太くなり、多くの場合はくねくねと屈曲・蛇行している状態を、「下肢静脈瘤」といいます。
座っているときは目立たなくても、立っていると徐々に太くなり目立ってくることがありますので、数分間立って、自分の足を眺めてください。
1.下肢静脈瘤を理解するために
○血管は全身に網の目のように分布し、「動脈」と「静脈」の2つに大別されます。
「動脈」:酸素をたくさん含んだ血液が流れています。体全体へ血液を運搬する血管です。
「静脈」:酸素が少ない血液が流れています。血液を心臓に帰す役割があります。
静脈の壁は動脈に比べて薄く、伸び縮みしやすくなっています。
○下肢の静脈は以下の2つの系統に分けられます。
「表在静脈」:体の表面近くに存在、「伏在静脈」が本幹
「深部静脈」:筋肉や骨の近く、つまり体の深いところに存在
○ 静脈血の流れは下肢では足先→心臓へ流れます(下図)
表在静脈→「交通枝」→深部静脈へ流れます。(「交通枝」とは表在静脈と深部静脈の橋渡しをする静脈です)
○静脈内で血液が流れる理由
【下肢静脈の特徴】
血管自体の抵抗が低く、圧力が低くても血液が流れやすくなっています。
所々に一方弁があり、血液が戻ることを防いでいます。
【どうして流れるの?】
静脈に接している動脈の拍動・筋肉収縮→静脈圧迫→血液を押しやる
筋肉がゆるむ→静脈内に血液が入ってくるが、「一方弁」が逆流を防ぐ
これを繰り返すことにより、血液が静脈内を心臓に向かって流れていきます。
2.下肢静脈瘤はなぜできるのか?
静脈内の逆流を防ぐ弁が壊れたり(弁機能不全)、静脈の壁が弱くなってしまった場合に、静脈内に血液の逆流が起こります。
逆流が起こると薄い壁の静脈は膨らみます。これが、静脈瘤となります。
3.下肢静脈瘤になりやすい人は?
性 :男性より女性に多い
年 齢:加齢とともに起こりやすくなる
妊 娠:妊娠をきっかけに静脈瘤ができたり悪くなったりする
約半数の方が妊娠をきっかけに発症
産後三ヶ月程で自然に消失する場合もある
生活様式:長時間立ち仕事に従事している人に多い
その他 :腹圧のかかる便秘やコルセット、肥満の人に多い傾向にあると言われています。
4.下肢静脈瘤の種類
大別して下記の4つに分けられます。
◆伏在静脈瘤(下図)
下肢の表在静脈のうち、本幹となる血管が「伏在静脈」です。
伏在静脈の本幹および、その枝分かれした直後の静脈が、こぶのように拡張してきた状態を、伏在静脈瘤といいます。
◆側枝静脈瘤(下図)
伏在静脈より枝分かれした、さらに先の部分が、拡張してきたものです。比較的、膝から下の部分に見られ、伏在静脈瘤よりも細いことが多いようです。
◆網目状静脈瘤(下図)
径2~3mmの、皮膚の直下の小さな静脈の拡張です。伏在静脈の分布とは無関係で、網の目状の広がりを示します。比較的鮮明な青色となります。
◆クモの巣状静脈瘤(下図)
皮膚は構造上、表面から表皮・真皮と分けられるのですが、径0.1~1.0mmの真皮内の極めて細い血管が拡張したものです。皮膚よりの盛り上がりが少なく、紫赤色になります。
5.下肢静脈瘤があると、どのような症状がおこるの?
【自覚症状】
症状がない場合も多いのですが、
・だるい、痛い、重い【血液うっ滞症状】
・むくみ【浮腫】
・かゆみ【掻痒感】
・寝ているときの足がつる【こむら返り】
など、様々な症状があります。
【他覚的所見】
・静脈が太くなる【拡張】
・静脈に沿って炎症を起こし痛くなる【血栓性静脈炎】
・皮膚が紫色になる【色素沈着】
・皮膚がぼろぼろになる【皮膚潰瘍】
・湿疹や出血
などを認めます。
症状は、長時間立っていた後や、一日の中では夕方に起こりやすく、また悪化することが多いと考えられます。
6.下肢静脈瘤ができてしまったら
《日常生活で注意すること》
静脈瘤の症状は、静脈に血液がたまってしまうために出現することが多く、それを改善するためには何をすればよいのかというと、
【日中は】
長時間の立位を避け、1時間に5~10分の下肢挙上での休息をとる事。また歩行・足踏みなどにより積極的に筋肉を収縮させ、静脈血が心臓に戻りやすいように促します。
【夜間は】
寝ている時は、枕を足の下に置くなどして15度程度上げます。
【足は】
ささいな掻き傷・虫刺されなどが、色素沈着・下腿潰瘍の原因となるため、静脈瘤のある脚を清潔にし、外傷を防ぎます。
《圧迫療法》
【目的】
脚の表面から圧迫し、血液が静脈内にとどまるのを防ぎす。そうすることにより、症状の出現や、静脈瘤の悪化を予防します。
【方法】
脚を包帯などで巻いて、表面から静脈を圧迫します。
一般的には、「弾性ストッキング」を着用します。
【注意点】
適切な圧迫圧のストッキングの継続着用が必要です。
弾性ストッキングを着用しても、血液がうっ滞することもあり、日常の注意事項を守ることが大切です。 皮膚に傷があり化膿や、血行障害が明らかな方には使用できません。
手術後も最低一ヶ月間は弾性ストッキングをはいて圧迫の継続が必要となります。
《根本的治療》
○ストリッピング手術
○硬化療法
が主な手術治療となります。
【治療適応】
○湿疹・色素沈着・下腿潰瘍などの皮膚栄養障害の明らかな場合
○足の浮腫・だるさなどの症状の明らかな場合
○血栓性静脈炎を起こす場合
○また症状がなくても、本人の美容的要望の強い場合も治療致します。
【治療目的】
完全に下肢静脈瘤を治すことは難しいため
○静脈瘤に関連した炎症等の合併症の予防
○症状をとること
○下肢の外観を少しでも良くすること
を治療目的と致します。
【治療方法】
○ストリッピング手術
静脈瘤となった本幹の血管を全部取り去る方法です。
ワイヤーのようなストリッパーを用いて手術を行います。
腰椎麻酔により下半身に麻酔を十分に効かせます。
股~足首付近までの静脈を、ワイヤーを用いて引き抜きます。
○硬化療法
血管を取らずに薬を用いて潰してしまう方法です。
膨らんだ静脈に直接針を刺して、血管の中に「硬化剤」を入れます。
硬化剤と血管との反応により、静脈瘤を繊維化させて潰します。
【ストリッピング手術と硬化療法の比較】
可能ならば、体に優しい硬化療法をお勧めします。
【硬化療法の合併症】
1.圧迫をするための枕子が原因となる
→皮膚炎・水疱形成
2.硬化剤の炎症反応による
→色素沈着、皮膚潰瘍・壊死
3.硬化剤と血液の作用による
→静脈瘤内血栓形成
4.硬化剤が深部静脈内へ流れ込みによる
→深部静脈血栓症→肺梗塞
その他、様々な合併症を起こす可能性があります。また、静脈を取り除いていないため、再発を認める事があります。
【硬化療法の付加処置】
再発を予防するために、以下の付加処置を追加します。ただし、それぞれの処置は硬化療法を単独で行う場合とは異なり、局所麻酔を行いて皮膚を切ることが必要となります。皮膚を切る長さは、それぞれの追加処置により異なります。
○高位結紮(下図)
伏在静脈本幹に逆流が原因となっている場合
逆流している静脈本幹を縛り逆流をとめます。通常は、またの部分(鼠径部)とひざ上の部分(膝上部)の二ヶ所で伏在静脈を縛り(結紮)ます。
○不全交通枝結紮(下図)
交通枝の逆流(不全交通枝)が原因となっている場合
不全交通枝を縛ることにより、逆流をとめます。
○静脈の選択的切除(下図)
直接静脈瘤の部分のみを取り除きます。
《治療方針》
静脈瘤の形により治療方法は異なります。
硬化療法を下肢静脈瘤に対する第一選択の治療法としています。
付加処置の追加により、再発の可能性を低くし、体に与える影響が少ない治療を提供しております。
段階的に治療を行い、追加して行く場合もあります。
下肢静脈瘤が気になる方はぜひご相談下さい。