筑波記念病院ロゴマーク 住所と電話番号
ドクターの知恵袋 ドクターの知恵袋 キービジュアル
第12回:危険な不整脈・・・これを見たらドクターコール・・・
( 2003年10月29日 掲載 )
 下の図は”刺激伝導系”というなれば心臓の神経系統を示します.
 洞結節から規則正しいリズムで電気信号が発信され,その信号が心房内の神経を経て心房筋に拡がり,心房筋を収縮させます.この収縮によって心房内の血液が心室に送られます. 信号の一部が房室結節に伝わるとヒス束-プルキンエ線維という神経を通って心室筋に信号が伝えられ,心室が収縮します.これで血液が肺と全身に送られます. こうした電気信号の流れを体の表面から記録したのが”心電図”です.刺激伝導系と心電図は図の点線矢印のように対比しています。

 上図の赤色矢印は本来の洞調律(P波)を示しています.心房から心室への信号は2回に1回しか伝えられず,徐脈(脈が遅いこと)を呈しています。
 危険な不整脈の一つで、体内式ペースメーカー植え込み術が必要です。

下の図は、心房から心室への電気信号の伝導が一時的に失われ,心房だけが収縮し,心室のみが一時的に止まった状態です。
 上図は2拍分、約2.6秒の心停止を認めたときの心電図です。心室の停止時間が長いと意識消失発作や脳障害に至ることもあり、ペースメーカー植え込み術が必要です。

 この図では、心房から心室への電気信号の伝達が完全に遮断され,心房と心室がそれぞれ独自のリズムで収縮している状態です。心室リズムは不安定で,心臓が停止状態になり意識消失や死に至りやすいため,ペースメーカー植え込み術が必要です.

 下の図もやはり完全房室ブロックの心電図で,いわゆる”QT延長”を呈しています.
すなわち図のBの長さが延長し,次ページで示すような危険な不整脈を起こしやすい状態です.延長の目安は図のBの長さがAのおよそ半分以上です.

 “トルサデ・ポワン”と読みます.(フランス語)前述のQT延長などで発生し易い不整脈です.心臓はけいれんした状態に近く,ほとんど動いていませんのでそのまま死に至る可能性が大です.直流除細動(電気ショック療法)などの救急蘇生術が必要です.

 かなり速い脈が持続し,血圧低下をきたして動悸やめまいを自覚し,場合によっては意識消失発作に至ることもあります.通常の心電図と比べて幅の広い波形が規則正しく認められるのが特徴です.心室細動(心臓全体のけいれんで心停止に近い最重症の不整脈)に至る可能性が大で直流除細動(電気ショック療法)などの救急蘇生術が必要です.ただし血圧が保たれていれば高周波カテーテル・アブレーションという治療法で治癒が期待できることもあります.

 通常これだけではとくに治療は必要ありませんが,ときに危険な不整脈に至る可能性もあります.次に治療を受けるべきと判断するためのいくつかのパターンを紹介いたします.

 上図の赤色矢印で示したのが心室期外収縮ですが,前の心拍のT波の上に乗り上げたような早いタイミングで出現しています.心室頻拍や心室細動に至りやすい危険なパターンの1つで,”R on T”といいます.

 上図の赤色矢印で示した4つの心室期外収縮はいずれも違う形で出現しています.広範な心筋の障害を疑わせる所見で,これも危険な不整脈を起しやすいパターンの1つです.

 心室期外収縮の6連発を呈しています.このような連発が多いほど持続性の心室頻拍や心室細動に至りやすく,危険なパターンの1つです.

 これは一見脈が速くなって大変そうですが,長く続かなければあまり問題になりません.自覚症状が強ければ治療しますが,抗不整脈薬の副作用を考えると経過観察のみとしたほうがいいことが多い不整脈です.

 脈が全くバラバラになるのが特徴です.多くは無症状ですが,ときに動悸やめまいを感じることもあります.急いで治療をする必要もありませんが可能な限り正常な脈に戻す治療を受けた方がいいでしょう.(脳梗塞などの血栓塞栓症の頻度が多くなります.)専門医にご相談ください.

 心電図の基本の線(基線)がノコギリの歯のような形になることから”鋸歯状波”と呼ばれています.この不整脈は右心房と右心室の間にある”三尖弁”の周囲を,電気信号が回旋することによって起こります.高周波カテーテル・アブレーションで根治が期待できる不整脈です.

 心房の波(P波)と心室の波(QRS波)の間隔がなくなり,なだらかなQRS波の立ち上がり(これをデルタ波といいます.)を認め,幅広い形の心電図になります.健康診断ではじめて指摘されることが多く、無症状のこともありますが,ときどき次に示すような速い脈の発作があります.

 WPW症候群における頻脈発作(脈拍数の速い発作)の心電図です.これは心房と心室を電気的につないでしまう余計な神経(副伝導路といいます)ができてしまい,これと正常の神経(刺激伝導系)を回路として電気が回ってしまうために起こる不整脈です.ほとんどは高周波カテーテル・アブレーションで完全に治すことが可能な不整脈です.

 WPW症候群の人が心房細動発作を合併するとこのような不整脈になります.
心室細動に移行しやすいかなり危険な不整脈で,直流除細動などの救急蘇生術が必要となります.なるべく早い時期に高周波カテーテル・アブレーションを受けるべきです.

 一見かなり危険な心室頻拍か?というような心電図ですが,これは体を規則正しく動かしたりすると心電図モニターに記録されやすいものです.よく見るとサイン・カーブ状の波形の中に正常波形を規則正しく認めます.歯磨き中に記録されることが多いことから”歯磨き頻拍”などと呼ばれ,全く問題ありません.

 狭心症の胸痛発作時には右の拡大図に示したとおり,”ST 部分”が下がった形が認められます.この患者様は右冠動脈#1 99%,#2 100%, 左前下降枝#6 75%,#7 90%+75%,第1対角枝 90%+75%,高位側枝 75%といういわゆる”3枝病変”という重症の狭心症でした.

 不安定狭心症の場合安静時において図のような”(巨大)陰性T 波”が認められることがあります.この患者様は右冠動脈 #1 の完全閉塞と左前下降枝 #7 の 75% 99% 狭窄を伴う狭心症でした.できるだけ早期に治療が必要です.
 心肥大などでも似たような心電図になることがあります.

 急性心筋梗塞の患者様の心電図です.”ST 部分”の上昇(赤矢印)を認めます.この患者様は左前下降枝 #7 の完全閉塞を認めました.
 死に至る可能性の高い危険な病気ですので一刻も早く治療を開始する必要があります.

 急性心筋梗塞の患者様の心電図です.”ST 部分”の上昇(赤矢印)を認めます.右冠動脈 #1 の完全閉塞を認めました.この心電図の青矢印に示すST低下は”鏡像現象”という心筋梗塞のときに特徴的な変化です.ST部分の上昇と低下を同時に認めた場合は ST 上昇を優先的に考えます.
[TEXT by 仁保 文平, 筑波記念病院 循環器内科]
※執筆者の所属は、執筆当時のものです。

前のコラム:第11回:糖尿病のお話(下)

次のコラム:第13回:胃カメラの実際


他にもたくさんの記事があります。
トップページ(全記事を掲載)も合わせてお読みください。