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第16回:炎症から発癌へ~ ヘリコバクター感染症と胃癌について
( 2005年10月26日 掲載 )
ピロリ菌の発見でノーベル賞!
先日、世界で初めてヒトの胃粘膜から「ピロリ菌」を発見したオーストラリアのウォーレン博士とマーシャル博士が、ノーベル賞を受賞しました。発見当初は、「強力な胃酸のある胃の中では、どんな細菌も棲息できるはずがない」という当時の常識から、誰にも信じてもらえなかったようです。それから約 20 年以上が過ぎ、ようやく世界的にその偉業が認められました。
日常の生活の中でわれわれ人間は、たくさんの微生物と共存しています。最近、さまざまな「抗菌グッズ」が大変な人気をよんでいますが、自分の身の回りから完全に細菌を排除することは、まず不可能です。すべての人間の腸(とくに小腸)には、善玉の細菌が感染しています。この「腸内細菌」が存在するからこそ、食べたり飲んだりしたものは、適切に消化・吸収されています。一方、ピロリ菌のように、胃炎や潰瘍の原因となったり胃癌の原因となったりする悪玉の細菌に感染している人もいます。感染する細菌そのものが悪なのではなく、細菌が感染することによって、いい働きをするのか?あるいは、感染によってヒトの体に「炎症」を起こして、われわれの健康に悪い影響を与えるのか?そこが、好かれたり逆に嫌われたりする大きな分かれ目です。 炎症から発癌へ
善玉の腸内細菌は、ヒトの腸粘膜には「炎症」を起こしません。しかし、ピロリ菌は、大半の患者さんに胃炎を引き起こし、最悪の場合、その終着点として「胃癌」を招きます。今回、ウォーレン博士とマーシャル博士がノーベル賞を受賞したのも、「ピロリ菌感染症が、慢性的な胃炎から最終的に胃癌に進行する可能性があること」を世界中が認めたからに、他なりません。ではなぜ、ピロリ菌感染による胃粘膜の「炎症」から、癌細胞が発生するのでしょうか?「炎症」が起きると、その周囲の細胞はさまざまな障害を受けて、結果的に細胞の寿命が縮まってしまいます。すると、普通のサイクルよりも、早く新しい細胞を誕生させなければなりません。しかし、新しい細胞を短時間で産み出すことができなければ、「とりあえず」似たような細胞を産生して、なんとか間に合わせようとします。その際に、わずかながら「型のいびつな細胞」も一緒にできてしまう場合があり、これを異型細胞とよびます。万が一、異型細胞が時間とともに悪性細胞(=癌細胞)へ進行してしまえば、「炎症が癌を招く」という結果になるのです。 もちろん、ピロリ菌に関連するすべての胃炎が胃癌へ進行するのではなく、その他たくさんの原因が重なって、最悪の場合にのみ胃癌になると考えられています。ですから、やみくもに心配する必要はありません。
ピロリ菌の検査
2000年10月から、ピロリ菌の検査には健康保険が適用されるようになりました。1.胃カメラを行なった際、粘膜の一部の組織を採取しピロリ菌の存在を確認する方法 2.血液や呼気を採取して、ピロリ菌の反応が出るかどうかを調べる方法 など、いろいろな検査法があります。 近年では、健康診断やドックでも、バリウムによる胃透視検査を行なわずに、ピロリ菌の検査を優先する場合が少なくありません。ピロリ菌は身近な感染症ですから、一度検査を受けてみてはいかがでしょうか? ピロリ菌の治療
ピロリ菌の治療薬にも、健康保険が適用されています。再発する胃潰瘍・十二指腸潰瘍でお悩みの方は、消化器内科の外来を受診してみて下さい。特に、若年の患者様ほど、早期に除菌治療を受ける必要があるといわれています。ぜひ、ご相談下さい。 [TEXT by 池澤和人, 筑波記念病院 消化器内科]
※執筆者の所属は、執筆当時のものです。
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