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89回:自分の身体が無限大に拡大していく-身体感覚の延長について-

 夏が始まり、夏休みやお盆といった行楽シーズンが始まり、車でどちらかに出かける機会も増えるのではないかと思われます。普段にも増して車に乗るという機会が増えるのではないかと思います。運転操作に自信がある方ならば、問題がないのですが、新車を購入したばかりとか、免許を取得したばかりという方は車庫入れや駐車場で止める際にヒヤッとすることがあるのではないかと思います。そこで今回は道具(車)と身体の感覚という観点から操作を考えてみたいと思います。

 皆さんは自動車を運転する時に、自分が自動車を操作しているだけで、走行しているのは自動車であるということを意識していないと思います。つまり自分自身が自動車の大きさに拡大して道路上を走っているという感覚になっているのではないかと思います。また運転が熟練した方であれば、左膝から左足部付近あたりまでが左のバンパーで、右膝から右足部付近あたりまでがあたりが右のバンパーという意識に変わり、臀部付近がやはり後方のバンパーの感覚になりハンドルを切っていると言われています。この身体感覚は普段は我々は意識はしませんが、右手が現在どこにあり、足はどういう状態にあるかということは健常者であれば、目をつぶっていていてもわかります。そういった感覚が車に乗車することによっても起こっているということなのです。駐車場でよくみかける、このくらいでハンドルを切れば、前の塀や他車にぶつけずに曲がれるなという感覚は身体感覚の延長が起きているから操作を行えると言われています。よくバンパーを擦ってしまうという方やハンドルを大きく切り過ぎるという方は、この両膝と臀部の感覚がバンパー付近まで感覚と一致していないのかもしれません。

 このことは道具の操作の習得にも言えることです。パソコンで文章を打ち込む際に、キーボードに習熟した人であれば、キーボード上の文字はいちいち見ることはしないで、両手の人差し指のホームポジションにおかれていれば、自然と操作されて入力されていきます。慣れた人であれば「a」は、左手の小指のホームポジション下にあるキーで押して、などという事は考えないと思います。つまり習熟により手指が自然と自己の表現の一つとなり操作を行っていると言われています。

 つまり道具の使用によって人間は身体の一部になりうることができるという事がいえます。私の職業は作業療法士ですから、作業療法の一つとして道具の使用や操作を通じて訓練を図ることをひとつとしております。道具の使用によって人間に及ぼす作用というのは未知数の部分を感じる訳です。

 話は元に戻るのですが、つまり運転技術の特に車両の大きさに合わせたハンドル操作に限ったことなのですが、両膝と臀部の感覚がバンパーの感覚と一致するように練習をすればハンドルを切る際に「ひやっ」とすることがなくなるかもしれません。自分の膝を意識しながら車を運転してぶつけてもよいダンボールなどをわざとぶつけてみてみるという練習でもよいかもしれません。とにかく自分の身体と車両の大きさを意識できるようにしていければ「ひやっ」とすることは減少していくかもしれません。

 身体の感覚の延長を考えると、思うことなのですが、全長80m、全幅70m近くの飛行機のジャンボ機を操作に慣れた機長は、尾翼が臀部付近となり、両翼が肩付近となって操作をしているのではないかと考えてしまうのです。つまり自分の身体が80mも拡大するという事を考えると興味を持つわけであります。実際にはどうなのかを操縦しているジャンボ機の操縦士にぜひ聞いてみたいところであります。

[TEXT :斎藤 裕作業療法士}]

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