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115回:スロートレーニング

 "スロートレーニング"という言葉をご存知でしょうか?最近スポーツ界を中心に注目目されている筋力増強の方法で、勢いをつけずにゆっくりとコントロールされた動きで、一回の動きで長い時間筋肉を収縮させるように運動を行うというものです。ゆっくりした運動というと太極拳やヨガも最近人気が高まっていますが、ここで紹介するスロートレーニングは重りやマシンを使った筋トレをゆっくり行うというものです。

 筋力強化の方法は第2次世界大戦以降、科学的に分析され確立されるようになりました。筋力を増強させるためには過負荷の原則というものに基づいて、普段の生活で使うよりも大きい、少し疲れるくらいの負荷をかけて筋肉をある程度以上に強く収縮させないといけない、という考えが生まれたのもこのころです。その後今日までさまざまな筋力増強の方法が考案されてきました。

 筋トレは疲れます。かっこいい体、納得するパフォーマンスは楽をしていても手に入りません。しかも間違った方法ではケガにつながる可能性もあります。しかし残念ながら疲れに対しては、理想のアスリートやモデルの写真を見ながら気持ちを奮い立たせてがんばるくらいしか対策がありませんが、がんばってトレーニングしたことによるケガを予防することはできます。そのために考えられたのがスロートレーニングです。
 アスリートの筋トレのイメージとしては、巨大なバーベルを、歯を食いしばり、声を上げながらすごい勢いで持ち上げている様子を想像する人もいると思います。巨大なバーベルに関しては、人それぞれ目標や体格に応じて負荷は変わるのでアスリートならバーベルも大きくなるでしょう。
 歯を食いしばったり声を出すのは、そうすることで神経系の反応閾値が低下して力を出しやすくなるとされているので問題なしです。ただ、すごい勢いで持ち上げている、というところがポイントです。勢いをつけて反動で持ち上げるトレーニングを続けていると、関節を構成する組織に少しずつダメージが蓄積されてケガをしやすい状態になってしまいます。筋肉は損傷と回復を繰り返しながら強く、大きくなっていきます。
 
しかし健や靭帯のような組織は一度損傷してしまうとなかなかもとどおりにはなりません。体を強くするためのトレーニングで体を傷つけてしまうという矛盾を防ぐという意味で、スロートレーニングという概念が生まれました。そしてそれはバーベルに限らず、自宅でも道具を使わずに簡単にできる自重でのトレーニングや、ジムに行って行うマシントレーニングにも同じことが言えます。また、筋肉を大きくするようなトレーニングだけではなく、ゆっくりとした運動を使ったダイエット法も本や雑誌でよく目にするようになり、様々な場面でスロートレーニングが注目されています。

 もちろん筋トレのメニューを構成する要素はスピードだけではなく、繰り返す数、セット数、休息時間、運動の種類や続ける期間などいろいろあります。どんな対象にどんな方法が最適かを決めるのは意外と難しい問題なので、リハビリを行っている人はリハビリスタッフに、ジムに通っている人はトレーナーに聞くのが確実でしょう。運動スピードに限っても速い運動と遅い運動でそれぞれ長短あるようですが、ゆっくり運動した方がどうやらケガをしにくそうだというのは間違いなさそうです。

 もともとはアメリカでプロスポーツ選手を対象に発展したトレーニング方法ですが、関節の負担を減らすという考えから生まれたのなら、ケガ人や高齢者にも良いはずです。世界最長寿国で高齢化がますます進むわが国で、普段から体力維持に気をかけるのも重要です。仕事でせわしなく動いている人も、基礎体力作りはゆっくりとした動きでやってみてはどうでしょうか。

[TEXT :前田 悠紀人理学療法士}]

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