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142回:腹部外科のリハビリテーションって?

 つい先日、プロ野球福岡ソフトバンクホークス王貞治監督が胃癌の手術を行ったとニュースで報道されていました。私はそこまで野球ファンではありませんが読売巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄さんが脳梗塞を発症したり、今回の王監督だったり私の両親世代にはショッキングな出来事だったようです。
 手術は腹腔鏡による胃全摘出術で、最大1.5cmの穴を6ヶ所と胃を摘出するための4cmの開腹を行ったとのことです。翌日、ICUから一般病棟に戻り、病棟内を歩いたそうです。
 一般的に腹部外科には、中等度〜高度の侵襲的手術である開腹手術と低侵襲的手術である腹腔鏡手術あるいは内視鏡的手術があります。手術侵襲が大きい開腹手術では、手術後の早期離床は重要事項の1つとされています。こうした開腹手術を受ける患者さんは65歳以上の高齢者が多いといわれています。腹部外科手術前後に包括的理学療法(術前からの呼吸練習、体位排痰法、腹式呼吸、早期離床などの併用)を行うことはすでに確立されています。近年の高齢者人口の増加に加え、手術手技、麻酔、術前・術後管理技術、外科的栄養法などの急速な進歩により手術の安全性が高まり、高齢者に対する開腹手術が急増しています。一般に高齢者は手術に十分耐えられますが重要臓器の潜在的な障害や機能低下を伴う頻度が若年者より高いため、いったん術後合併症が発生すると、一気に致命的な転帰を招く危険性がきわめて高いということを認識し、高齢者のもつ種々の特殊性や問題点を絶えず念頭におく必要があります。私たち療法士も高齢者の開腹手術後では、身体面・心理面のいずれにおいても手術後の回復が遅く、各臓器の生理的機能低下、栄養状態不良、社会的背景などから家庭内および社会生活への復帰に時間を要する場合が多いことを経験しています。
 したがって、一般的経過に沿って良好に回復することが多い若年者の開腹手術後に比べ、高齢者の回復手術後に対しては呼吸理学療法、術後早期離床プログラム、体力・筋力の回復運動のみではなく、ADLや生活の質(QOL)の向上を目的とした在宅復帰指向の理学療法を積極的に行うことが重要となります。このことは、「根治手術をしたが、寝たきり高齢者」になってはならない、術後のQOLをいかに維持・向上するかが大切であるという高齢者癌治療の観点からもいえることです。基本的には開腹手術はほぼ術翌日あるいは術後1〜3日に歩行ができるように目標を設定しています。したがって、手術前の指導も含めて積極的に早期離床を進めていくことが私たちセラピストの役割になります。早期離床獲得後は、約20〜30分間で、顔がやや紅潮し全身にうっすらと汗をかき爽快感を感じる程度の大きくリズミカルな有酸素運動が適切とされています。具体的には歩行練習や自転車エルゴメーターなどを実施しています。リハビリテーションといえば脳卒中や骨折の患者さんが多いイメージですが、腹部外科でのリハビリテーションもあるということを今回は簡単にご紹介しました。

※侵襲:医療において、生体内の恒常性を乱す可能性のある外部からの刺激。外科手術、感染、中毒など。

[TEXT :高橋 真希子理学療法士}]

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