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第148回:サッカーワールドカップでの日本代表の戦いについて
「なぜ日本は勝てなかったのか」
この話題については巷ではさまざまな意見が飛び交っている。「ジーコ監督の采配が悪かった」、「中村の調子が悪かった」、「中田英がチームで浮いていた」、「柳沢はなぜあの場面でシュートを外したんだ」、「宮本はダメだ」、などなど。確かにこれらの意見は今回の敗因の一側面を捉えている。しかし、何事においてもそうであると思うが、誰か一人のせいにしたり、ある一つのプレーだけを取り上げて論じたところで、問題の根本的な解決には至らない。
確かにジーコ監督の采配には我々素人から見るとうなずけない部分が多々見られる。しかし、ゲームの流れ全体から見ると、トルシェ監督時代には見ることのできなかった中盤でのパス回しや守備一辺倒のつまらない試合というのはなくなったように感じる。また選手個人の批判に関しても、確かに悪い側面はあるものの、仮に他の選手が入っていたとして結果は違ったのであろうか。
オーストラリア戦後半
私は選手一人一人がその時々の状況を的確に判断し、かつその状況判断がチームとして瞬時に一致し、それをアクションとして起こす力がなかったのではないかと感じる。その悪い形が如実に現れたのが、緒戦の対オーストラリア戦の後半だ。
前半26分、中村のクロスボールがラッキーな形でゴールに入り1−0とリードして後半を迎える。オーストラリアは後半8分、16分、20分と続けざまに攻撃の選手を投入し、長身FWケネディ、ビドゥカへ早い段階からロングボールを放り込むパワープレイと、アロイージ、カーヒルらのドリブルによって、前半とは違う戦い方を魅せる。日本チームはその攻撃に対し、当初は落ち着いて対処し、逆に逆襲から何度か決定的な場面を作っていた。しかし、追加点には至らず、逆に後半14分の坪井のけがによる交代、攻撃にアクセントを加えるという意図からであろう後半25分の小野の投入によって徐々にその歯車が狂い始める。
ゲームのポイント
自分はこの後半で日本が考えなければならなかった大きなポイントが二つあると考える。
第一に、FWはシュートを打って攻撃を終わらせるということである。後半高原、柳沢らは何度か決定的なシーンを作っていたが、シュートに至らず、中途半端なパスや思い切りの悪いシュートで攻撃を寸断するシーンが見られた。結果、MFの運動量は増え、ラインは間延びして相手に攻撃のチャンスを与える結果となった。シュートで攻撃を終わらせるということはひとつゲームの流れを切ることができ、DFラインの陣形を整えることができるためマークの修正ができるし、押し込まれた場面では相手の勢いを止めることができる(ちなみにイタリアレベルになるとこれをシュートで終わらせるのではなく、ゴールまでをも奪ってしまう)。
第二に、守るのか攻めるのかその瞬間にはっきりとプランを持つことである。そしてその鍵となるボランチが舵取りをしなければならないということである。後半投入された小野は、中沢に「攻撃的に前に出ていいといわれた」、と報じられている。事実小野のポジション取りはやや攻撃的であったと思われる。しかし、相手が長身のFWにロングボールを多用している場面でもっとも大切なことは、そのセカンドボールを拾うことである。まずはしっかりとセカンドを拾う、つまり守るということを徹底し、その位置から自分が攻めあがるのではなく、得意のロングパスで味方を走らせることがあの場面で小野に要求されたことではなかったのではないか。また、それまでパサーであった中村・中田は、今度は自ら走り出してパスを受ける側にまわるべきではなかったのか。しかし、小野は中途半端に前掛りとなり、小野のパスを受けるべきFW、中田英の運動量は落ち、中村はボールに寄っては来るものの、走り出すプレーに欠け、小野のプレーは空回りしてしまう。
この二点が上手く修正されず、ラインは間延びし、攻撃にメリハリがない時間帯が続き、ついに日本は後半39分に同点ゴールを許し、さらに立て続けに2点を奪われ3−1で敗れ去る結果となった。
現在の日本の位置と今後の課題
この四年間、日本サッカーはジーコ監督の下「自主性」、つまり選手がゲームの中で自らのプレーを選択するということをスローガンとして進んできた。その結果、昨年のアジア大会では、何度も相手にリードされた状況から逆転するという粘りある試合を魅せ優勝した。また今回のW杯でも守備一辺倒のゲームではなく、得点を挙げリードするゲーム運びをすることができるようになった(予選リーグでは3試合中2試合は先制している)。最早世界へのチャレンジャーではなく対等に戦える国に着実に成長してきたのではないか。しかしそのゲーム運びがまだ稚拙であり、それが如実に顕れたのが前述した、対オーストラリア戦の後半である。
日本は細かいパス交換を主体とした攻撃サッカーを軸とする一方で、老獪でいやらしく、非情なまでに現実的なゲーム運びができるようになり、1−0、2−0でゲームを終わらせることができるようになることが次なる課題ではないだろうか。リードした状況でどう「主体的」にゲームを進めて勝つか、そここそが今後の課題である。
オシム日本
イビツァ・オシム(Ivica Osim)
旧ユーゴスラビア、現在のボスニア・ヘルツェゴビナ出身の65歳。サラエボのジェレズニチャル、フランスのストラスブールなどでプレーし、監督として旧ユーゴスラビアを90年W杯でベスト8に導き、祖国分裂に伴い代表監督辞任。その後ギリシャ、ユーゴ、オーストリアなどで指揮を取り、Jリーグで弱小だったジェフを3年間で優勝争いまでできるチームに育て上げた、知る人ぞ知る百戦錬磨の名将である。機能的で攻撃的に走り、考えるサッカーを標榜し独特なチーム作りをする。彼ならば過渡期にある日本の課題を的確に把握し、修正を加えてくるであろう。もしかしたら1−0、2−0ではなく、さらに攻めて2−1、3−2などの試合をするチームになるかもしれない。いずれにしても日本のサッカーが間違いなく面白くなるであろう。ぜひ期待したいし、こんな監督の下でプレーできる選手を心底羨ましく思う。いくぞ日本!
[TEXT :小川 岳史{理学療法士}]
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