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149回:その人らしく生きるために

 皆さんは「認知症の人」と聞いた時、どのようなイメージを持つでしょうか。「『認知症』の人」でしょうか。それとも「認知症の『人』」でしょうか。
 例えば医師から「あなたのご家族は認知症です」と告げられたとします。医療の専門家からの診断ですから、私たちはまず、その「認知症」とは何かを―特にそれについて多少の知識がある人ならなおのこと、理解しようとするでしょう。何ができて、何ができないのか、何がわからないのか。症状の進行はどのように進むのか、治療法は?等々。それらは間違っていませんし、専門的な知識を得て対処法を講じることは、その方の生活をスムーズに進行させるために大切なことです。

 しかし、そのような知識、対処法はその方の生活上の能力を論じていることになり、先ほど挙げた「認知症の人」の「認知症」のみにスポットを当てているだけにすぎません。時に私たちは認知症の症状ばかりにとらわれてしまうことがあります。認知症を患った人は「アルツハイマーの犠牲者」、「あたまのおかしい人」、「精神障害老人」なのでしょうか?
 「認知症の人」はあくまでも「人」であるということを改めて見直したいと思います。
認知症の方を抱えるご家族は、認知症の症状があったとしても、その方に「その人らしく」生活して欲しいと願っているでしょう。では「その人らしさ」とは何でしょうか。
 「その人らしさ」とは認知症の症状や生活能力だけではなく、多くは、その人がもつ「人となり」や「情緒」によって作られるものではないでしょうか。トム・キッドウッド教授は「その人らしさ」を次のように定義しています。

 「人や社会とのつながりの中で、周囲からひとりひとりの人に、与えられる立場や尊敬の念。共感、思いやり、信頼を意味するもの」

 具体的に考えてみますと、認知症の父親がいたとします。その父親はその日あったでき事をすぐに忘れてしまいますし、一日に度々失禁もあります。家族は以前とは変わってしまった父親の様子を残念に思い、介助にも手を焼いています。でも、食事をとるときは、その父親は前からそうしていたように、テレビのよく観える特等席ですし、休日には以前よりその父親が好きであった野球観戦に誘ったりします。
このケースと先ほどの定義を照らし合わせてみますと、この認知症の父親は家族というつながりのなかで、家族からこれまで負ってきた父親という立場を認められ、敬われ、機食事のとき特等席に座っています。また以前からの野球観戦という趣味を家族からも大切にされています。

 「その人らしさ」とはその人のあるがままを受け入れるのと同時に、周囲の人が与えることでもあるのです。「その人らしさ」を尊重した介護で、行動障害(易怒性、不穏、徘徊、異食行為など)が軽減されたという報告もなされています。
 もう一度、認知症の方への接し方を見直してみませんか?

[TEXT :阿部 あゆみ作業療法士}]

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