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172回:ミニ移植

 はじめまして。リレーコラム初担当となりました理学療法士の大好崇史と申します。毎日たくさんのスタッフと共に業務に励んでおります。業務中はみんな真剣そのもので、とても刺激的です。もちろん学ぶことも多々あり。そんな中、私は「ミニ移植」という言葉を初めて耳にしました。白血病の治療法の1つです。私は初めてでしたが、世間では最近よくこの言葉が飛び交っているようです。今回はその「ミニ移植」について少しですがお話しさせていただこうと思います。

 白血病とは、白血球が悪性腫瘍(がん)化して白血病細胞となり、血液または骨髄の中で増殖する病気です。白血病を治すためには、骨髄の中身を健常な人の細胞、特に血液の細胞の源である造血幹細胞に入れかえる治療が必要となります。これを一般的には骨髄移植と言います。最近では末梢血幹細胞移植と臍帯血移植が広く行われており、これらをまとめて造血幹細胞移植と呼んでいるそうです。

 造血幹細胞移植には大きく2つの方法があります。
  ひとつは、がん細胞を攻撃するために強い抗がん剤や放射線治療を受け、造血幹細胞を廃絶あるいは疲弊させた後に、新たに健康な造血幹細胞を補充する方法。
  もうひとつは、がん細胞を攻撃する免疫細胞(ナチュラルキラー細胞など)をドナーのものと新しく入れかえることによって、がん細胞に対してより強力な攻撃力を発揮させる方法です。これまでは超大量の抗がん剤や放射線照射からなる「前処置療法」を患者さまに行ってから移植するのが大半でした。しかし、これにより患者自身の健全な臓器が障害を受けることも多くあります。このため、移植療法を受けることのできる年齢はせいぜい55歳までで、臓器にすでに障害を持つ人は移植を受けることはできませんでした。さらに白血病細胞というのは生やさしいものではなく、このように多量の抗がん剤を使っても絶滅させることは難しいことなのです。

 しかし最近の研究の結果、前処置療法によって殺されずに残った白血病細胞を、移植後に体内で増えるドナーのリンパ球が攻撃し、やがては治癒に導くことがわかってきました。移植を行った後、多くの場合に免疫反応がおこり、これが一定以上に強くなると移植片対宿主病(以下GVHD)が起こります。GVHDとは、ドナーのリンパ球が患者の身体を異物とみなして攻撃する反応のことを言います。GVHDが重症になると命に関わりますが、軽症の場合にはメリットもあります。そこで前処置として投与する抗がん剤や放射線の量を減らし、かわりに免疫抑制剤を注射して幹細胞移植を行うことにしました。この移植方法を「ミニ移植」と言います。ちなみにミニ移植の語源は、抗がん剤や放射線の量を減らす「minimize」からきています。こうすれば患者の免疫反応をしっかりと抑えてドナーの造血幹細胞を根づかせることができ、さらに少ない副作用で移植ができます。

 ミニ移植は「骨髄非破壊的移植」とも呼ばれます。ミニ移植では抗がん剤を使う量が減ったために、白血病の再発が増えることが心配されますが、少なくとも白血病や悪性リンパ腫などの疾患では、がん細胞を抑え込む力に関しては従来の移植には劣らないことがわかってきています。ただし、よいことばかりではありません。免疫の力が、がん細胞だけをやっつけてくれればよいのですが、予想以上にパワフル過ぎてGVHDが発生するおそれがあるからです。このGVHDは個人差が大きく、事前予測が難しい。ミニ移植で大切なことは、がん細胞を攻撃する免疫の力と、副作用としてのGVHDのバランスをとりながら治療することですが、口でいうほどには簡単ではありません。ミニ移植には、このような問題点もあることをよく理解する必要があります。最近では、転移性の腎がんや大腸がんなどに対しても同種ミニ移植が行われる傾向があります。

 私たちは、現在このような患者さまに対してもリハビリを行っています。副作用に個人差があるため、リハビリも一人ひとり内容が違います。患者さまが何を必要とし、それをどうすれば満たしてあげられるのかよく考え、充実したリハビリを提供できるよう努力していこうと思っています。

[TEXT :大好 崇史理学療法士}]

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