第176回:鼻根骨骨折について
( 2007年04月03日 掲載 )
みなさんこんにちは、理学療法士の柿本です。
突然ですが、みなさんは鼻の骨を折った経験はありますか?まあ、そうそうめったに折るものではありませんが、私は昨年、なんとその貴重な体験をしてしまいましたので、ご報告を兼ねて鼻根骨骨折について少々述べさせて頂きたいと思います。
鼻の骨折と聞いて、なんとなく思い浮かぶのは、喧嘩、スポーツ中のアクシデント、転倒、交通事故etc...ですが、私の場合は、あまり思い出したくありませんが、昨年4月の、それも就職して初めてのお披露目の場である、新人歓迎会の余興の最中にそれは起きてしまいました。なぜ今頃...と思う方もいらっしゃるとは思いますが、なかなか精神的なショック?から立ち直るには時間がかかりまして...やっと(笑)って話せる状態へと落ち着きましたので、これから新人歓迎会の季節がやってくる、この時期に、この珍しい経験をお披露目することとしました。
一体、何が起きたかといいますと、まあよくある空手の真似事のような立ち回りをしている最中に、相手の男性が受身をとった際の回転した足が、私の顔面を直撃したわけで...近くで観ていた人が言うには"バキッ"と音がしたとかしないとか...という状況でした。鼻に関わらず、骨折の経験をした方はわかると思いますが、その瞬間で"あーやってしまったな"となんとなくわかるものです。
その後、鼻血がしたたり落ちるのを感じながら、なんとか余興を続けようと途中まで頑張ったらしいのですが...らしいというのは、実はその後の記憶がないというか...曖昧なのです。しかし、そのまま続けられるわけがなく、私と一騎打ちで戦う予定だった男性が私の異変に気づき...というか、鼻血を出しているわけですからね、気づきますよね!そして憐れな私は、何気に舞台の袖に連れて行かれ、その後も余興は続けられ、どうやらリハビリテーション部の出し物は大盛況に終わったようです。めでたし、めでたし!!と、ここまでの話の流れでは、ただの笑い話で終わりなのですが、少し専門的な解剖のお話を付け足しながら、鼻の骨折を甘く見てはいけないという事をお話ししたいと思います。
皆さんが鼻と聞いて思い浮かぶ部分は、いわゆる鼻腔で、内部は鼻中隔というもので左右に仕切られており、この鼻中隔は上半分を篩骨の垂直板、下半分を鋤骨、前方を鼻中隔軟骨というもので形成されています。このいわゆる鼻根部の篩骨は、脳頭蓋を形成する8つの骨の一つなのです。この8個の骨からなる脳頭蓋は、頭蓋腔を作りそこに脳を入れて、保護しているいわゆる頭蓋骨の一部であり、篩骨は頭蓋底を形成していますから、この部分にダメージを与えるということは、実は大変な合併症を生じる恐れがあるのです。
『頭蓋底骨折に伴いうる病態として脳神経麻痺、髄液漏、頭蓋内気腫があるが、このうち頭蓋内気腫の多くは髄液漏に伴うものである。頭蓋底骨折に対しては開放性頭部外傷と見なして強力に抗生物質の投与を行い、頭部外傷急性期の治療を行う。』1)とあるように、鼻の骨折とはいえ、上部の鼻根骨の骨折は頭蓋底骨折を伴っている危険があるので、注意が必要なのです。私もその危険性があったためか、念のため一泊入院しましたが大事に至らず、今現在、元気に職場で働いています。
皆さんも、人生何が起こるかわかりません!特に、鼻の骨折にはご注意下さいね!!
[TEXT :柿本 倫子{理学療法士}]
【引用文献】 1) 医学大辞典(第18版)、P1469、南山堂
【参考文献】 クイックマスター解剖生理学(初版)、P35~36、竹内修二著、医学芸術社
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