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第190回:動くのは身体がよくなってから?~早期離床の意義~
( 2007年07月10日 掲載 )
リハビリテーションというと、脳卒中や骨折などの患者さまに対して行うというイメージが強いと思います。もちろん、私たちの病院でも脳血管疾患、骨・関節疾患の患者さまに対してリハビリを行っていますが、その他に外科・内科疾患の患者さまに対するリハビリも行っています。今回は手術を行う外科の患者さまに対し、どのような目的でリハビリを行うのかをお話したいと思います。
皆さんは、風邪で数日間寝ていたら、風邪が治った後も本調子に戻るまで数日必要だった、という経験をしたことはありませんか?私はもっと極端な経験をしたことがあります。ある手術をし、術後3日間ベッド上で寝たきりとなったのですが、4日目、看護師さんと一緒にベッドから起き上がり座った瞬間、眩暈、冷や汗、息切れ、動悸といった症状が出現し、たった数分間座っただけでどっと疲れてしまいました。もちろん、手術前はそんなことは一切ありませんでした。では、私の身体には一体何が起こったのでしょう?
1940年代から欧米で行われた安静臥床実験では、長期の安静臥床が著しい1回心拍出量(一回の心収縮で心臓から出る血液の量)の低下をもたらし、これによって運動耐容能力の低下や起立性低血圧が生じることが明らかになっています。起立性低血圧の症状は、前述した眩暈、冷や汗、悪心といったもので、つまり私も安静臥床によって心肺機能が低下し、このような症状が出たと考えられます。また実験では、3週間の安静臥床実験(排泄時のみ起きることが許可された)で低下した最大酸素摂取量が実験前の状態に回復するまでに2~5週、脈拍数の回復には7週間を要したとの結果が出ています。この実験は20~32歳の正常男性を対象として行われています。心肺機能は20歳頃をピークに1年で1%低下するといわれていますから、年齢が高くなれば元々の機能も低下しており、回復にもさらに時間を要することになります。
一方、術中の全身麻酔に伴う人工呼吸器管理や、安静臥床、創部痛による深呼吸回数の抑制などで、肺の中では分泌物(痰)が増えてしまいます。これにより肺炎になったり、痰が気道を閉塞すると肺の一部が含気を失ってしまい、無気肺となる危険性があります。これらに対しては、術前からの呼吸練習(腹式呼吸の練習や、痰を出す練習など)を行い、術後も痰が肺の中に貯留することを防ぎます。また、気道には線毛といって痰を気道の外へと移動させる機能があり、線毛運動は重力によってより活性化します。そのため、術後はなるべく早く座る、立つなどの抗重力肢位を取ることを進めていきます。また、歩行は抹消の骨格筋に存在する呼吸受容体を刺激し、自然に換気量を増やす効果があるとも言われており、無気肺や、低酸素血症の予防になると考えられます。 [TEXT :古林 裕美子{理学療法士}] ■前のコラム:第189回:カレーパワー ■次のコラム:第191回:年中大敵!?紫外線!! 他にもたくさんのコラムがあります。 |