みなさん、こんにちは。
今回は、高齢者の聴覚障害とその特徴についてお話したいと思います。
○ 聴力の加齢による変化
聴覚機能に個人差はあるにせよ、加齢によりだれでもが次第に低下していくものです。これは、加齢による全身の機能低下のひとつと考えられています。特に60歳代、70歳代になると、高音域に対する聴力の低下が顕著になってきます。そして70歳代、80歳代と年齢を重なるにつれて、聴力は確実に低下して、会話にも支障をきたすと考えられています。
○ 聴力の低下に対する日常的対応の遅れ
1. 難聴を自覚することの難しさ
特に聴力の場合は、生理的な機能低下がゆっくりであり自覚されにくいことがあります。老人性難聴に見られる聴力の低下は経年的変化であり、変化の速度がゆっくりしています。ある日突然に聴力低下が生じれば、誰でもが聴こえの悪さや異変に気づきますが、時間的変化がゆっくりであるために、本人も周囲の人々も気づきにくいのが常です。また、難聴とはいっても会話音域の全てが聴こえなくなるわけではありません。そのため、音は聴こえているがことばが明瞭に聴き取れないといった程度として意識されることがしばしばあり、重大な事態として受け止められにくいことが多くなるようです。
2. 聴力低下による行動制限とがまん
社会的な活動内容の変化に伴って、聴覚の低下が活動そのものの絶対的な阻害因子となりにくいため、少々の聴こえにくさや不便はがまんしてしまうという点も見逃せません。現役で仕事などをしている場合には、聴こえの低下によって不便さを訴えることもありますが、職業から離れているような場合などには、多少の聴こえの不便さはあっても、そのことにより自分の活動に極端な制限を受けないことが多いのです。そのため、多少聴き取りにくくてもそのままの状態でがまんしてしまうことになりがちです。
3. 補聴器に対する知識と情報の不足
通常、多くの高齢者は老眼を意識すると,その不便さからそれほど迷うことなく眼科や眼鏡店に相談に行かれることが多いようです。眼鏡をかけるということは、社会的にも障害者という認識はなく、ひとつの便利な道具、また最近ではファッションの一部として意識されているともいえます。それに比べて、一般的に聴覚障害を持つ方にとって「聴こえにくいから、補聴器を使用する」といった認識は薄く、補聴器を使用するという行為については、自分が何らかの障害者となったという受け止め方をする人が多いといえます。こういった現状の背景として、社会での聴覚障害に対する情報や補聴器に関する情報が不足していることも原因のひとつといえます。
以上のように、加齢に伴う聴力の変化は確実にやってくるのですが、さまざまな理由から、そのような変化に対して適切な対処ができているとはいえないのが現状のようです。
[TEXT :神 智亜希{言語聴覚士}]
【参考文献】
聴覚障害Ⅱ 臨床編 第1版、山田弘幸、佐場野優一編著、建帛社