■はじめに
体がだるい、疲れやすい、という症状を感じその原因を考えた時、“もしかしたら肝臓がわるいのでは?”と心配される方もいらっしゃることと思います。
太り過ぎによる脂肪肝、飲み過ぎによるアルコール性肝障害、ウィルスによる肝炎など、思い浮かぶ病気はいくつかあります。御存知のように肝臓病の多くは、食事を含めた生活様式に気をつけて、時にはお薬の力を借りながら、治していく、あるいは長く付きあっていく内科の病気です。しかし、一方で、症状がなくても状況が許せば、是非とも外科的手術をお勧めしたい肝臓の病気があることも事実です。
では、どのような肝臓の病気が外科手術の対象となり、どのような手術が可能なのでしょうか?それはどのような根拠に基づいているのでしょうか? 今回は、肝臓という臓器の生い立ち、構造、機能についてお話し、肝臓切除、さらには肝臓移植を含めた“肝臓と外科”との結びつきについて、加えてこの結びつきを通じて近年解ってきた“肝臓の持つ不思議な力”についても御紹介し、皆様にできる限り御理解頂きたいと思っております。
■肝臓病の症状
肝臓に病気が起きた時の症状を詳しくみてみましょう。 実は全く症状を感じないことも意外に多く、このことが“肝臓は沈黙の臓器”といわれる所以です。一方で、体がだるい、疲れやすい、食欲がない、お腹がはる、熱がでる、体にぶつぶつができる、体が黄色くなる(黄疸)、体が痒くなる、などの症状があり、症状が進めば、お腹に水がたまる、体がむくむ、出血しやすい、胃や食道から出血する、意識の状態が悪くなるなどの症状がでることもあります。いずれにしてもどことなくつかみどころがなく、この中では黄疸が比較的特徴的な症状ですが、この症状がでたら間違いなく肝臓が悪いと言えるような特異的なものはありません。
では、なぜ肝臓病の症状はこのように多彩なのでしょうか。 それは肝臓の機能が大変複雑であることに起因しています。
■肝臓と消化管
肝臓は、丁度右側肋骨に守られるように胸部と腹部を境する横隔膜の直下に存在する腹腔内臓器で、重さは大人で約1.0〜1.5 kg
あり、体重の約1/50を占めるかなり大きな臓器といえます。肝臓は、食べ物が食道・胃・小腸・大腸へと直接通過していく管、いわゆる消化管ではありませんが、この消化管と協力して消化機能に大きな役割を持っています。
まず2つの大きな流れを御理解頂きたいと思います。
1つの流れは、食べた物が消化され、小腸や大腸から栄養分や水分が血液を通して腸管の静脈へ吸収されると、この血液は全て門脈という太い静脈に集められて肝臓まで運ばれるという、血液の流れです。
もう一つの流れは、肝臓は胆汁という消化液を分泌し、胆管という管を通して十二指腸に排泄されています。ここで胃を通過した食物にまぶされ、その後の消化吸収を助けることとなり、小腸、大腸へと進み栄養素などと一緒に再び胆汁が血液に吸収されるという、胆汁の流れです。
このように、消化をめぐり肝臓と腸管との間には、血液と胆汁を介した大きな循環があるのです。
[TEXT by 坂本俊樹, 筑波記念病院 外科]
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