咳は空気中のほこり、細菌、ウイルスなどが肺に入るのを防ぐからだの防御反応です。また痰を出すための反応でもあります。したがって咳は体に必要な反応でありむやみに咳止めの薬でとめればよいといったものではありません。しかし咳が長く続く場合や、異常な咳が出れば何らかの疾患が 存在する可能性があります。
痰を伴う咳を湿性咳嗽(がいそう)、痰を伴わない咳を
乾性咳嗽と
いいます。
風邪、急性上気道炎で出る湿性咳嗽が最もポピュラーなものです。この咳は自然に軽快することがほとんどです。中には数週間から1ヶ月以上続くこともあります。発熱が続く場合や、呼吸困難、全身倦怠感があれば肺炎が疑われます。肺炎であれば抗生剤が必要になります。
長く続く乾性咳嗽に咳喘息、アトピー咳嗽という疾患があります。咳喘息は気道過敏性が亢進して出る咳で、中には気管支喘息に移行するものがあるといわれています。アトピー咳嗽は咳感受性が亢進したものです。温度の急激な変化などで出る場合が多いようです。気管支喘息はヒューヒューと音がする咳が出ます。粘張な痰を伴うこともあります。気道の慢性炎症、アレルギー反応で起こります。気管支拡張薬、吸入ステロイド、吸入気管支拡張薬、抗アレルギー薬などが有効です。
喫煙によって発症する慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎)は咳とともに息切れが主な症状になります。喫煙者では症状が無くてもすでに慢性閉塞性肺疾患に罹患していることが多々あります。まず禁煙が治療の基本です。禁煙により病気の進行は止まります。喫煙を続けると将来呼吸困難が強くなり、大変つらい状況になります。

肺癌では喫煙の影響が強い中心型(肺門部)肺癌に咳の症状が出ます。

末梢型肺癌は初期にはまったく症状は出ません。咳はかなり進行した状態で出現します。

気管気管支異物(気管気管支に異物が入り込んでしまった状態)は咳で見つかることが多くあります。気管支鏡での摘出が可能なことが多いですが、手術が必要な場合もあります。

胸膜疾患でも咳が出ます。胸膜炎、気胸では咳とともに胸の痛みを伴います。
胃食道逆流症といった病態が最近注目されています。胃液が食道に逆流し食道の入り口、さらに気管に入り咳が出ます。喉頭違和感や胸焼けが伴うことがあります。胃酸を抑える薬が有効です。
お年寄は喉の神経が鈍感になり唾や、胃液が気管に入りやすくなり、咳が出ることが多くなります。悪化すると誤嚥性肺炎になることがあります。咳止めは禁忌でむしろ咳をさせることが重要です。
薬の副作用での咳があります。高血圧の薬の一種でアンギオテンシン変換酵素阻害薬が有名です。この場合は薬の変更が必要です。最近は誤嚥性肺炎の予防に咳を出させるためこの薬を使用することがあります。
咳に使用薬には咳止め、気管支拡張薬、去痰薬、吸入ステロイド、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬などがあります。咳止め薬の多くは脳の一部の咳中枢に作用する薬で咳が出ないようにする薬です。咳の原因を治療する薬ではありません。肺炎、誤嚥性肺炎、膿性の痰が出る咳には禁忌です。このような疾患ではむしろ積極的に咳をさせることが治療では重要です。咳止め薬を使用したほうがよいのは、進行肺癌で咳がつらい場合や、乾性咳嗽で夜眠れない場合です。
咳が長引く場合は精査が必要です。胸部レントゲン、CT、呼吸機能検査、気管支内視鏡検査、アレルギー検査、喀痰検査(細胞診、細菌検査など)を状況によって行います。
咳が心配な方は呼吸器内科または呼吸器外科を受診してください。
[TEXT by 神山幸一, 筑波記念病院 副院長・呼吸器外科部長]
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