百パーセント安全で、事故の無い予防接種というものはありません。ご質問のように、中には死亡してしまうような重い副反応を起こすことも、とても稀ではありますが、起こりえます。
予防接種をするということは、予防接種をやらなかったことで、罹ってしまう病気の危険度と、予防接種をやることでおこる事故の危険度を天秤にかけて、どちらを選ぶのがお子さんにとって良いことかと考えて、予防接種を受けるかどうかを決めるということなのです。予防接種を受けないと決めた方は、予防接種をしないで自然に病気にかかることの方が、よりメリットがあると考えられたわけで、それはそれでその方にとっては正しい選択なのでしょう。
予防接種をするという選択の中には、予防接種をすることで、つらい病気に罹らずに済むというメリットと、稀ではあっても事故的な副反応が出ることも受け入れるという意味の両方が含まれています。ある意味で避けられない副反応を、受け取ってくれる方がいるおかげで、大多数の予防接種を受ける人たちは、病気から免れる利益を受けることができるわけです。ですから、副反応で不利益を受けた方々には、社会全体が感謝をして十分な補償をして差し上げることが必要です。
そのような前提の上で、予防接種制度は成り立っています。ごく稀におこる副反応だけを取り上げて、そういうことが起こるから、予防接種をすること全てが悪いことだという議論は、私は間違っていると思います。ある程度の危険(といっても、町で交通事故に会う確率などから比べたら桁違いに小さい危険度ですが)があることを知った上で、それでも、予防接種を受けるメリットがあると十分に理解できたら、予防接種を受ける選択をしてください。
予防接種によって起こる副反応のいくつかは、予防接種を打たないことで、本当の病気に罹ってしまったときには、もっと頻度が高く、かつ程度も重くなることがあることも知っておく必要があります。たとえば、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)ウイルスでおこる無菌性髄膜炎がひところ大きな話題になりましたが、自然に罹患したおたふく風邪ではワクチンで起こるものよりもよりひんぱんに髄膜炎がおこります。風疹ワクチンを打たないで、成人した女性が妊娠中に風疹に罹ってしまうと、高い確率で胎児に重大な障害を起こします。
予防接種の良いところのひとつに、接種を受ける時期を選べるということもあります。ワクチンをやらずに、自然感染で病気に罹ることを選択していると、今お話したように妊娠中にその病気に罹ってしまったり、大事な仕事や試験の時にたまたまその病気に罹って1年を棒に振るというようなことも起こりえます。
私は、そのような危険の方が、予防接種で副反応が出る危険性よりもはるかに重大だと思っています。仕事を持つお母さん方にとっては、一つ一つの病気にお子さんが罹るたびに、会社を1週間とか10日とか休むことも、つらいことだと思います。予防接種を打つことで、そのような事態が避けられるのです。