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母親学級受講者による質問とその回答集
 『予防注射』についての回答集
インフルエンザの予防注射は必要でしょうか。何歳からいつ頃受けるのがよいのでしょうか、また副作用について教えてください

 インフルエンザはたかが風邪と思われているかもしれませんが、子ども達のかかる病気としてはかなり重い病気です。もしも、インフルエンザ脳症になったりすると、命が失われたり、重い後遺症を残したりすることもあります。インフルエンザに対する抗ウイルス薬が進歩してきて、適切な時期に使えば、有熱期間を短くしたり、症状を軽く済ませることができるようになってきています。しかし、その薬を使い始めるのは、症状が出て病気になったことが分かってからです。薬が効いてくるまでの間は、相当高い熱に苦しめられます。また、もっとも怖い合併症である、インフルエンザ脳症は発熱してからとても早い時期に重症化してしまうことが多いので、抗ウイルス薬が効いてくる前に手遅れになってしまう可能性もあります。今使われている抗ウイルス薬がインフルエンザ脳症にも有効であるという科学的に証明された証拠はありません。

 インフルエンザワクチンは、まだ発病阻止率が100パーセントとは言えませんが、たくさんの方に受けていただくことで、流行が阻止できれば、高価な抗ウイルス薬を山のように使う(最近は毎年のように不足騒ぎがありますね)必要がなくなり、インフルエンザ脳症の発生も抑えられるものと思います。
 インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行が予測されるウイルスをターゲットにして夏頃から急ピッチで作られ、10月半ばすぎから使えるようになりますので、そのころから接種を受けて頂くのが最良です。子ども達は2回打たなければなりませんし、効果が十分に上がってくるまでには2回目の注射後、数週間かかりますので、インフルエンザの流行が始まる12月より前に接種を済ませておくようにします。年齢は6ヶ月以降であれば打つことができるとされていますが、免疫の発達の問題や外出先でインフルエンザウイルスを貰う危険度が少ないことなどから、私どもの病院では、0歳児には、積極的には接種をお勧めせず、1歳過ぎてから接種していただくようにお勧めしています。

 以前使われていたインフルエンザワクチンはインフルエンザウイルスをすりつぶして、全体をワクチンとして使っていましたので、発熱物質などの不純物が含まれ、発熱などの副反応がかなり高率に見られたのですが、現在使われているHAワクチンというのは、インフルエンザウイルスを構成している、ヘモアグルチニン(HA)というウイルスの部品に相当する成分だけを取りだしてワクチンを作成しています。以前のワクチンのような余計な成分を含まず、大変副反応の少ないワクチンになっています。

 それでも、予防接種には、わずかではありますが、強い副反応を起こす方がおられます。でも、その副反応を起こす危険度よりも、インフルエンザに罹って重症化したり、何日も高熱に苦しむことの危険度とを比較すると、私は予防接種を受けて頂いた方が良いと思っています。任意のワクチンとなっているのは、けっして接種を強制されているわけではなく、以上のようなことを十分に理解して、接種を受けることにメリットがあると思われた方のみが受けて貰うという制度になっているためで、あとは、保護者の方の判断です。

■インフルエンザに罹ったかどうかはどうやって知ることができるのですか?

 以前は、経験のある医師による診断と、うがい液からのウイルスの分離などで診断をしていましたので、早い時期に正確な診断をつけることが困難でした。今は、鼻水などを使って20分くらいでウイルスがいることを見つけることができる検査キットが使えるようになりましたので、診断がきちんと行えるようになりました。
 インフルエンザウイルスをやっつける薬を正しく使うためにも、この検査が大変有用です。高熱が出て、節々が痛むというような時にはぜひ、早めに受診して検査を受けて下さい。

■インフルエンザに罹ったときは熱さましを使っても良いのですか?

 インフルエンザに罹るととても高い熱が続いてつらいのですが、熱は、体をいじめるために出ているのではなくて、原因となっているウイルスをやっつける力を体が作り出すためには体温が高い方が都合が良いので、体を守る反応として熱が出ています。ですから熱が出たという理由だけで熱さましを使う必要はありません。しかし、熱が高いとご本人もつらくて水分も飲めなくなってしまうようなことがあります。このような時には、安全性の高い解熱剤を選んで控えめに使うようにします。強力な熱さましで一気に平熱におとす必要はありませんし、熱が一時的に下がったとしても病気が良くなったわけではないので、また熱が上がっていきます。この時に震えがきたり、余計なエネルギーを使って熱を生み出すので、消耗してしまいます。
 最近、小児領域で注目をあびているインフルエンザ脳炎・脳症で、特定の解熱剤が、その死亡率をあげるということが言われています。解熱剤そのものが脳炎・脳症の原因になっているという訳ではありませんが、危険因子となることは確実なようです。急激な熱の上げ下げも体に良いとは思えません。そういった意味では比較的穏やかな作用で、脳炎・脳症時の危険もないとされている、アセトアミノフェンなどの解熱剤を本当に必要な場合のみ使うようにします。

(最終更新日:2006年01月16日 13:24)
予防接種を受けない方もいらっしゃると聞きました。接種後に稀に死亡例があると新聞などで読んだのですが、これからどれは必ず受けて、受けなくてもいいものもいいのでしょうか。

 百パーセント安全で、事故の無い予防接種というものはありません。ご質問のように、中には死亡してしまうような重い副反応を起こすことも、とても稀ではありますが、起こりえます。
 予防接種をするということは、予防接種をやらなかったことで、罹ってしまう病気の危険度と、予防接種をやることでおこる事故の危険度を天秤にかけて、どちらを選ぶのがお子さんにとって良いことかと考えて、予防接種を受けるかどうかを決めるということなのです。予防接種を受けないと決めた方は、予防接種をしないで自然に病気にかかることの方が、よりメリットがあると考えられたわけで、それはそれでその方にとっては正しい選択なのでしょう。
 予防接種をするという選択の中には、予防接種をすることで、つらい病気に罹らずに済むというメリットと、稀ではあっても事故的な副反応が出ることも受け入れるという意味の両方が含まれています。ある意味で避けられない副反応を、受け取ってくれる方がいるおかげで、大多数の予防接種を受ける人たちは、病気から免れる利益を受けることができるわけです。ですから、副反応で不利益を受けた方々には、社会全体が感謝をして十分な補償をして差し上げることが必要です。

 そのような前提の上で、予防接種制度は成り立っています。ごく稀におこる副反応だけを取り上げて、そういうことが起こるから、予防接種をすること全てが悪いことだという議論は、私は間違っていると思います。ある程度の危険(といっても、町で交通事故に会う確率などから比べたら桁違いに小さい危険度ですが)があることを知った上で、それでも、予防接種を受けるメリットがあると十分に理解できたら、予防接種を受ける選択をしてください。

 予防接種によって起こる副反応のいくつかは、予防接種を打たないことで、本当の病気に罹ってしまったときには、もっと頻度が高く、かつ程度も重くなることがあることも知っておく必要があります。たとえば、おたふく風邪(流行性耳下腺炎)ウイルスでおこる無菌性髄膜炎がひところ大きな話題になりましたが、自然に罹患したおたふく風邪ではワクチンで起こるものよりもよりひんぱんに髄膜炎がおこります。風疹ワクチンを打たないで、成人した女性が妊娠中に風疹に罹ってしまうと、高い確率で胎児に重大な障害を起こします。
 予防接種の良いところのひとつに、接種を受ける時期を選べるということもあります。ワクチンをやらずに、自然感染で病気に罹ることを選択していると、今お話したように妊娠中にその病気に罹ってしまったり、大事な仕事や試験の時にたまたまその病気に罹って1年を棒に振るというようなことも起こりえます。
 私は、そのような危険の方が、予防接種で副反応が出る危険性よりもはるかに重大だと思っています。仕事を持つお母さん方にとっては、一つ一つの病気にお子さんが罹るたびに、会社を1週間とか10日とか休むことも、つらいことだと思います。予防接種を打つことで、そのような事態が避けられるのです。

(最終更新日:2005年08月11日 14:34)
予防接種のあとじんま疹が出たのですが、今後予防接種を受けても大丈夫でしょうか?

 これは、じんま疹が予防接種のために起こったのか、あるいは、他の原因によるじんま疹がたまたま予防接種のあとに出たのかなどを考慮して、次の注射をすべきかどうか、決めていかなければなりません。かかりつけの医師に状況を良く判断して貰って下さい。

(最終更新日:2004年11月15日 18:34)
任意の予防接種は全て受けた方がよいのか?またその必要性・有効性について教えて下さい。

 任意でも接種を勧められているワクチン(水痘、おたふく風邪、インフルエンザなど)はぜひ受けておかれた方が良いと思います。
 任意接種になっているのは、それぞれに確かに理由があるのですが、どのワクチンにおいても、予防接種をせずにその病気そのものに罹ってしまうよりも、ワクチンで免疫を付けておく方が、私ははるかに利点が多いと思っています。それぞれのワクチンの特徴などは予防接種を受け付けて下さる主治医の先生にご相談下さい。

(最終更新日:2004年11月15日 15:59)
風邪を引きやすく、なかなか予防接種が進みません。風邪の後は最短でどれくらい期間をあければ接種可能でしょうか?

 予防接種を進めていく時期は、お母さんから胎児期に分けてもらった免疫が種切れになって、自前でいろいろな病気を経験して免疫をつけて行く時期ですから、やたらと熱を出したり、風邪をひいたりします。予防接種をその合間にいれていくのは大変で、切実な問題ですね。どれくらい開けてから予防接種をするかということは、先行する病気の重さや、控えている予防接種の種類によって変わり、一概に言えません。先行する病気を診ていただいている先生に良くご相談になって下さい。

 一つのヒントとして、生きている弱毒化したウイルスを入れるような生ワクチン(例えば麻疹、風疹など)では、先行する病気の治癒期に体の中に作られているインターフェロンという、ウイルスをやっつける成分の影響を受けて、あまり早くに予防接種を受けると折角のワクチンが付かない可能性があり、4週間は開けた方が良いと考えています。

(最終更新日:2004年11月15日 15:42)