基本的に、子供たちが服用する多くの風邪薬や抗生物質については、飲みやすさを考えて、好きなものに混ぜて飲ませていただいても良いと思います。
例外的に、こういうものとは混ぜないでくださいねと注意をされた薬については、それを守ってください。
一般的なお話としては、すっぱい物(酸性の強いもの:ヨーグルトやりんごジュースなどを含みます)に混ぜると苦味が強調される薬がかなりあります。飲みやすいように粉末の粒つぶを砂糖などでコーティングした薬は、口の中では甘いままでいますが、胃の中に入ると吸収されて薬としての役割を果たさなければなりませんから、コーティングを溶かして、中身がでてくるように工夫されています。胃の中には、胃酸があって、酸性になっているので、酸性の場所に出ると溶けるように作られているのです。こういう薬を、飲ませる前に、すっぱいものと混ぜると、とても苦くなって飲みにくくなります。苺にかけるコンデンスミルクやアイスクリームの溶けかけたものなど、甘さはあっても、すっぱく無いものに混ぜるとうまく飲んでくれることが多いようです。
もう一つ、飲み込めなかった薬が口の中に残っていると、しだいに溶けて苦くなってきますので、薬をうまく飲んでくれたら、大きい子であればうがいをし、小さい子であれば、ふだん喜んでゴクゴク飲んでくれるものを少し与えて、口の中に薬が残らないようにしてください。
その後、お口直しに、薬の入っていない、甘いものをちょっぴり与えておくと、薬を飲んだ後に吐き出すことが少なくなります。
■「飲みきってください」といわれた薬は症状が良くなっても全部飲みきらなくてはいけないのですか?
お薬を使うのは必要最小限にとどめて、なるべく自分の体を守る力に任せておきたいところですが、わざわざ「飲みきってください」と指示があったということは、途中で止めてはいけない薬だからだと思います。
たとえば、溶連菌感染症では、抗生物質を飲んでいただくと、翌日ころから熱は下がり、のどの痛みもサッと良くなります。しかし、症状が良くなったと安心して、そこで、抗生物質を飲むのを中止すると、高率に再発をし、急性腎炎やリウマチ熱といった恐ろしい合併症をひき起こすことがあります。こういった病気の時には、「10日間は必ずお薬を飲みきってくださいね」というような指示をして処方をしています。
そのような指示については、ぜひ守っていただきたいと思います。
■急な発熱などに備え、常備しておくとよい薬(市販)は何ですか?
特別な持病がある方は、主治医の先生に相談をして常備薬を処方してもらってください。とくにこれといった病気の無い方は、無難な解熱剤程度で十分だと思います。
アセトアミノフェン(アルピニー、アンヒバ、バファリン<市販のもの>、ナパ、ピリナジンなどの商品名で売られています)が副作用も他の解熱剤と比べると少なく、お勧めです。
このお薬は解熱だけの目的でなく、頭痛などの痛みを軽減する目的で使うこともできます。
なお、病院で処方されるバファリンは市販されているバファリンとは別の薬で、「アスピリン製剤」です。血小板機能を抑制したりする特別な目的で使われます。
■市販されている小児用の薬(風邪薬等)は用法・用量の欄に記載の年齢になったときには飲ませても問題はないのでしょうか。逆に問題なく市販薬を飲んでも良いのは何歳からでしょうか。
市販のお薬を、用法用量を守って飲ませてくれれば、もちろん何歳であっても、問題はありません。多くの市販薬は不特定多数の方が飲まれることを前提に作られ、用量設定がなされていますから、無難な量が指定されています。用法用量の欄に記載がある年齢であれば、なんら問題なく飲んでいただけると思います。
一方で病院、診療所で処方するお薬は、不特定多数ではなく、その個人の患者様に応じて処方をしますから、体質や体重、アレルギー歴などを勘案して、最大限ぎりぎりまで量を増やすことがあります。処方薬は、それだけ切れ味が良く、効果が期待できることもあります。ですから、その薬を他の人が使うことは、ある意味危険なことがあります。同じ症状だからといって、兄弟間やお友達の間で、病院でもらった薬を融通しあって回しのみをすることはしないでください。
■熱など風邪の症状があるとき、どの程度から薬を飲ませたほうがいいのか?(なるべく薬に頼らないで治す方法も知りたい)
なるべく薬に頼らないという考え方には大賛成です。でも、子供たちにはいろいろな病気があり、なおかつ急に悪くなるものもあるので、具合が悪く見えるときには、一度、小児科医の診察を受けて、治療をせずに様子を見ても良い病気なのか、きちんとお薬を飲む必要のある病気なのかを見分けてもらうのが一番だと思います。どの程度の症状があれば危険ということが判断できる簡単な基準があれば良いのですが、実はこれがなかなか難しいのです。ただ、子供たちは、病気が重ければ元気なく、ぐったりしますし、高い熱があっても、悪い病気でなければ、元気に動き回って食欲もあまり落ちないということが多いので、状態を良く見れば、悪い病気かどうかは分かりやすいという面もあります。
大人みたいに仕事を休みたいから病気っぽく振舞うとか、本当は辛いのに空元気で頑張るというような演技を小さい子供たちはしないので、子供たちの普段の様子とくらべて、どうもおかしいぞという印象がある時は、放っておけない悪い病気のこともあるので、早めに受診されることをお勧めします。
■以前もらった薬や座薬は使ってもよいのですか?
病院で処方するお薬というのは基本的に、その時その時の病態に応じて最適な薬をお出しするというのが原則です。「万能の風邪薬」といったものはありません。ですから、前の時と症状が似ているからといって、余っていた薬を使うことには賛成できません。
以前に使われていた薬が、その後の医学の知識の変化で使ってはいけない(禁忌の)薬となることもしばしばあります。例えば、インフルエンザの時に以前に良く使われていた解熱剤が、インフルエンザ脳症の重症度を上げるかもしれないということが分かって、使われなくなったというようなことがあります。そのような座薬が、たまたま自宅の冷蔵庫に残っていて、熱さましぐらいだから良いだろうと安易に考えて使われてしまうことがあります。
子どもたちは成長に応じて薬用量が変わっていきます。前の体重に応じて出ている薬が現在も有効であるかどうかも分かりません。それやこれやで、古い薬をおうちの方の判断で使うのはできるだけ避けるべきです。同じような理由で、お姉ちゃんやお兄ちゃんの薬をたらい回しで使うのも厳禁です。
(最終更新日:2004年11月15日 18:43)■解熱剤の副作用と使うタイミングを教えてください
熱はけっしてダテに出ているわけではありません。体の中で、免疫の反応を高めて、病原菌やウイルスをやっつけるために必要があるので、体は一生懸命「熱」を作っているのです。病気の時に熱がでるわけですから、熱は嫌なものだと皆さんも思っておられるでしょうが、本当は、病気にかかってしまった以上、熱は出てくれなくては困るのです。ですから、熱の割に機嫌が良くて、良く眠れるような時に解熱剤を使う必要はまったくありません。
それでも、解熱剤というものが存在する理由は、熱が出ると、確かに気持ちが悪かったり、食べ物がノドを通らない、つらいというような時がありますね。そのような時に、少しでも楽になるために使ってもらうのが目的です。でも、解熱剤を使ったからといって、早く病気が治るわけではありません。どちらかというと、熱を下げることで、かえって病気の治りを遅くするかもしれません。インフルエンザの時に、不用意に強力な解熱剤を使うと、インフルエンザ脳症という病気の重症度を高めるかもしれないということを厚生労働省が警告しています。そして、インフルエンザの時に特定の解熱剤を使用しないようにと勧告しています。
インフルエンザに限らず、熱を無理に下げると、病気が治っていない時には、必ずまた熱を上げようとする働きが出てきて、ガタガタ震えたりして、急激な熱の上昇をおこすことがあります。このときに熱性痙攀をおこす危険性も高まります。
このようなわけで、解熱剤はあくまでも、熱が高くて、つらくて困るというときに、そのつらさをとってあげる目的で(病気の治りがおそくなるかもしれないというリスクと引き替えに)使うべきもので、解熱剤を使うことで、病気の治りが良くなるというわけではありません。
このようにお話をすると、必ず「でも高熱がでると馬鹿になると聞いたことがありますが」と聞かれます。
脳炎や髄膜炎などの重い後遺症を残す病気があります。これらの病気の時にも体は一生懸命、熱を作って病気の原因になっている細菌や、ウイルスをやっつけようとします。昔の、まだ医療知識が十分でない時代の人たちは、病気の原因がはっきりしませんから、不幸にもそのような病気になって、熱が出たあとで、重い後遺症を残した子供たちをみると、熱が出たから馬鹿になったと思うかもしれません。でも、そのような後遺症は、熱が出たから起こったのではありません。もし、その時代に解熱剤があって、解熱剤だけを使って治そうとしたとしたら、病気と闘う力を弱めてしまうので、かえって後遺症を重くしたかもしれません。そのようなわけで、病気を治すために、あるいは、病気によって重い後遺症を起こさないために解熱剤を使うというのは間違いです。あくまでも楽になるための一時しのぎの薬とわりきって使うべきです。
私の知っている小児科医の一人は、担当の患者様に対して、熱が出ても、解熱剤を使用しないようにお勧めし、解熱剤を処方することはまったくありませんと言っています。それでも病気の治りが遅くなったり、解熱剤を使わなかったために後遺症を残したなどという患者様は一人もいないと言っています。私もその意見に賛成なのですが、とても熱が高くてつらそうな時に何もしてあげられないのは忍びないという家族の方の気持ちを尊重して、本当に困ったときだけに使ってくださいといって、解熱剤を処方しています。
解熱剤は、「たかが熱冷まし」ではなくて、薬である以上副作用も存在しますし、他の薬に比べて、安全性が高い薬とはいえないことも承知しておいてください。
(最終更新日:2004年11月15日 18:34)■抗生物質は飲み過ぎるとよくないのでしょうか?
ご質問の意味は、間違って量をたくさん飲み過ぎるとという意味でしょうか、あるいは、長く飲み続けるとという意味でしょうか?
抗生物質を含め、どんなお薬でも不適切な使い方をしても良いということはありません。抗生物質を処方する時に主治医は病態に応じて、必要最小限の薬を使うようにすると思います。重い感染症などの場合には、ある程度長く使わなければならないこともありますし、必要が無くなったら早くうち切ることもあるでしょう。主治医に良く説明をお聞きになって正しく使ってください。
■薬を飲ませた直後に吐いてしまった時は、また同じ量を飲ませても大丈夫でしょうか?
吐いた量や、薬の必要性の重大さなどによっていちがいには決められません。しかし、一般的には、薬を飲んで30分以内に嘔吐したときには、薬が出てしまった可能性を考えて、同じ量を改めて飲ませるようにしてもらっています。薬を飲んでから30分以上たってから吐いた時は大部分は吸収されたものと考えて、その回の飲み直しはしなくても大丈夫です。でも、これは一つの目安で、吐いたものの量などを見て、変えて下さい。
(最終更新日:2004年11月15日 16:00)■風邪のとき、抗生物質を飲むと整腸剤と一緒に飲んでも下痢をしてしまいます。どうしたら良いですか。
抗生物質の役目は細菌をやっつけることです。お腹の中(正確な言い方をすれば腸の中)には消化や吸収を助ける、体にとって必要な良い細菌がたくさんいます。腸の中にいれば役に立つ良い細菌でも、例えば膀胱の中に紛れ込むと膀胱炎の原因になることもあります。
炎症をおこしている細菌だけに効果があって、腸内の細菌には全く影響を与えることがないというような薬があれば理想ですが、現実には、そのような薬はありません。できるだけ腸内細菌には影響を与えないような抗生物質を選ぶこともありますが、それでは十分な治療にならないこともあります。ですから、下痢をするから抗生物質は悪い薬だなどと思わずに、病気の治療のためには下痢は避けて通れないものだ、くらいに割り切って、本当に必要な時には、下痢には目をつぶって抗生物質を使うのもやむを得ないでしょう。
また、なんらかの病気があって、熱が出ていたりすると、その病気のために消化の力が弱って、下痢になっていることもしばしばあります。ですから、すべての風邪の時の下痢が抗生物質の悪さのためとも言えないこともあります。
(最終更新日:2004年11月15日 15:40)■病院から処方された薬は、全部飲みきった方がよいのですか?
薬は必要最小限で使っていくのが正しい使い方ですし、そうなるように処方されていると思います。
しかし、尿路感染症や溶連菌の感染がある場合に、見た目に良くなったからといって、早めに薬を自己判断で止めてしまったりすると、しばしば再発して、合併症をおこしたり、難治になって泥沼化することがあります。主治医の指示を守ってきちんと治療をしていただくのが最良です。
(最終更新日:2004年11月15日 15:40)■風邪をひくと抗生物質を処方されますが、その時々で様々な種類のものが出されます。どのような違いがあるのですか?
まず、「風邪」という病名について。
よく風邪という病名を使いますが、「水ぼうそう」「はしか」というような、あるひとつの病原体によっておこる、単一の病気ではなく、それこそ、ありとあらゆる原因によっておこる、喉や鼻の症状を主体とする、放っておいても、多くの場合には自然治癒が見込まれる、体の変調を風邪と言うようですね。ですから熱が無く、鼻水だけの「鼻風邪」があったり、下痢や嘔吐が主症状の「おなかにくる風邪」があったりで、「風邪」っていったいなんなんだろうと思ってしまいます。わかりやすい言葉として風邪という言葉を良く使いますが、医学的には、風邪という言葉で、その患者様の病気の全てを説明することはできません。「風邪」症状をおこしている原因によって治療方針が変わってきます。
「風邪」として扱われるものの中で、扁桃腺炎や溶連菌感染症など細菌が原因になった病気に対しては、抗生物質が治療に必要ですが、子ども達の発熱の多くをしめるウイルスによる「風邪」の場合、抗生物質の効き目はありません。ですから、病態を良く確認して、抗生物質が必要な病気か、そうではないのかをきちんと評価して抗生物質の使用を決めます。
それぞれの抗生物質には、得意分野があり、この細菌にはこの抗生物質が良く効くというような相性があります。たとえば、最近、経験されることの多い、マイコプラズマという微生物は、通常良く使われるセフェム系の抗生物質(ペニシリンを出発点とする基本構造を持っていて、菌の持っている細胞壁の合成を阻害することによって殺菌効果を持つ)が効きません。マイコプラズマはもともと細胞壁を持っていないからです。マイコプラズマを疑う病態の時にはセフェムではない抗生物質を選ぶ必要があります。
このようなことをいろいろ考慮して使用する抗生物質を決めています。抗生物質といっても皆同じではなく、その時その時の病態に応じて選択する抗生物質が違うのです。どの抗生物質を選ぶかというのが、小児科医の腕の見せ所でもあるわけです。
ですから、何ヶ月か前の風邪の時に貰った抗生物質がたまたま家に残っていたのでそれを使いましたというようなことは、適切でない抗生物質が選ばれる可能性があり、お勧めしません。抗生物質というのは、断続的に飲んだり、量を少な目に使ったりすると、効果がないばかりか、耐性菌という、その抗生物質の効かない細菌に変化させたりして、かえって悪い結果をもたらします。決められた量を、決められた期間内にだけ使用することが、賢い使い方です。
(最終更新日:2004年11月15日 15:39)