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◎私が研究する理由と筑波記念病院での臨床活動

 作業療法士という職業を知った時、私は「これだ!」と思いました。作業療法士の仕事は工作や手芸などのアクティビティを通して患者さんを治療する職業と書いてあったからです。私は子供の頃から工作や手芸が大好きでしたし、しかも患者さんを治療することで人の役に立てる職業なんて、こんな魅力的な仕事はありません。

 患者さんを治療するからには、例えば薬の作用機序のように、作業療法にも科学的根拠に基づいた治療法があるのだと思いました。それを勉強するために私は作業療法士を育成する大学に入り、基礎的な医学の知識から作業療法の理論、実際の臨床の現場での作業療法まで一通り学びました。基礎医学の面白かったこと!人の体や脳の仕組みを科学的に解明しようとしていて、解明されればされるほど、疑問が湧いてきます。人の体は本当によくできていて、未知で、不思議です。これに対して、作業療法の理論にはがっかりしました。私の求めた科学的根拠に基づいた治療法はありませんでした。それでも、臨床の現場で作業療法士はすばらしい仕事をします。患者さんが今後生活していく上での最善の策を考え、身体機能の訓練、維持から、社会生活への復帰まで幅広くサポートします。ただ、まだ確立した治療法はないのです。その理由は、人間の体はまだまだ未知で、どのようなメカニズムで人は考えるのかはもちろん、感じるのか、動くのかさえも解明されていないからです。
 それなら自分で研究するしかないと思いました。不明なことを不明なまま続けていても、前進はありません。もちろん、私一人が研究したところで、人体はあまりに複雑で、その一端を解明するのが精一杯です。それでも、その解明された一端は小さな前進となり、治療法の確立に一歩近づけると信じています。

 この6年間、私は筑波大学で神経科学の研究者になるためのトレーニングを受けながら、筑波記念病院で非常勤作業療法士としての経験を積ませていただきました。筑波記念病院で患者さんに接するたびに私は私が研究する目的を実感しました。これからも、目的をしっかり見つめて研究を続け、少しでも大きく前進できるように走り続けたいと思います。

筑波大学大学院 人間総合科学研究科 感性認知脳科学専攻 システム 脳科学分野
 (2006年4月より米国留学)
作業療法士・日本学術振興会特別研究員 小島奉子