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つくばハートセンター

お知らせ

2014年04月01日 狭心症、心筋梗塞の話
センター長の我妻が2010年6月14日から17日まで、ラジオ日本(1422kHz)「健康知りたい話」に出演し、放送された内容を元に構成されております。
 

【 テーマ 狭心症と心筋梗塞の最先端カテーテル治療 】

1. 狭心症、心筋梗塞とは?
2. 狭心症、心筋梗塞になったらどうする?
3. 狭心症、心筋梗塞のカテーテル治療
4. 狭心症、心筋梗塞にならないために
 

1. 狭心症、心筋梗塞とは?

狭心症、心筋梗塞とはどのような病気ですか?
心臓はリズミカルに拍動を繰り返しているわけですが、心臓が動くためには心臓の筋肉に十分な酸素や栄養分のある血液を供給しなければなりません。この心臓の筋肉に血液を供給する血管が冠動脈というものです。この冠動脈が主に動脈硬化によって狭窄を起こしてくると十分な血液が心臓の筋肉に供給されにくくなります。その結果、自覚症状として胸が痛んだり、心臓の機能が低下したりします。これが狭心症です。いっぽう心筋梗塞も冠動脈の動脈硬化という点では同じですが、特に動脈硬化でもろくなったところは破れて、破れた部分から冠動脈の中に出血を起こします。この血液が冠動脈の中で固まり、これを血栓というのですが、これによって冠動脈が完全に詰まってしまうのが心筋梗塞です。心筋梗塞は詰まった冠動脈が関係している心臓の筋肉が壊死してしまうので、最悪の場合、心臓が止まり死に至る病気です。
 
どのような方が罹りやすいのでしょうか?
代表的なのは糖尿病がある方、高血圧の方、コレステロールの中でも特に悪玉コレステロールの高い脂質異常症、いわゆる高脂血症の方、タバコを普段吸われる方、そして肥満の方も罹りやすく、またメタボリック症候群というのを聞かれたことがあるかと思いますが、お腹周りが大きく、高血糖、脂質異常、高血圧のうち2つ以上当てはまる場合それに該当します。メタボリック症候群のように危険因子が、それぞれ程度がさほど悪くなくとも複数お持ちの方で内臓脂肪の多い方もこれら狭心症、心筋梗塞と言った動脈硬化による病気を発病しやすいということが明らかとなっております。
 
狭心症、心筋梗塞が疑われるのはどのような症状ですか?
典型的なのは胸の痛み、胸痛です。狭心症の場合、階段を上っている時や長く歩いている時など胸が締め付けられるような圧迫感や痛みが出たり、進行すると食事やトイレでいきんだりしても症状が出てくるようになります。この症状は一般的に朝方、寒いところで起きやすく、また休んでいると数分で自然に治まってきます。ただし狭心症の中でも冠動脈のけいれんが原因で起きる、冠れん縮性狭心症ではむしろ夜間や早朝に起きやすいのが特徴です。再現性を持って同じような時、あるいは同じようなことをすると胸の痛みが出てくるというのも狭心症の症状の特徴です。ですから一日中胸が痛いとか、何日かに一度チクチクするような痛みというのは狭心症の症状として一般的ではありません。心筋梗塞では血管が完全に詰まって心臓の筋肉が壊死してしまうことから、痛みは持続的で、安静にしても改善しないばかりか、むしろどんどんひどくなって冷や汗を伴う激しい胸の痛みとなることがめずらしくありません。
 
狭心症、心筋梗塞が疑われた場合どのような検査がありますか?
一般的には心電図が重要な検査ですが、狭心症の場合、症状の出ていない時に心電図をとっても全く異常所見が出ないことが多いです。したがって狭心症の方が病院に行って心電図をとっても問題ないと言われ、帰宅後心筋梗塞を発症してしまうこともあります。
専門の医療機関では、ベルトコンベアーの上を走ったり、自転車を漕いで心電図の変化をみる運動負荷試験や1日の心電図変化をみるホルター心電図、心臓の機能を評価する心臓超音波検査、アイソトープを使った心筋シンチグラム、そして最近ではCTの精度が向上しており冠動脈CTで評価する施設も増えてきました。しかし最終的に確定診断し、治療方針を決めるのは心臓カテーテル検査です。これは手首や足の付け根の動脈からカテーテルという細い管を心臓まで持っていって直接冠動脈を映す検査です。
いっぽう心筋梗塞の場合、多くは心電図と採血で診断が可能ですが、最終的には心臓カテーテル検査が治療をする上で必須となります。
 
 
2. 狭心症、心筋梗塞になったらどうする?

狭心症と診断された場合、普段の生活はどのようにすればいいのでしょうか?
まず無理をしないこと、心臓を鍛えれば治ると思って走ったりするのはとても危険です。病院を受診しても、大きな病院では検査の予約がだいぶ先になることもありますが、胸の症状の出る頻度が増えてきたり、軽い体の動きでも症状が出てきたり、あるいは休んでもなかなか症状がよくならなくなってきた場合、不安定狭心症と言って心筋梗塞に移行しやすい状態が疑われます。したがってこのように症状が短期間で悪くなってきた場合は病院に連絡して早めの受診をお勧めします。
また狭心症が疑われた場合、血管拡張剤という飲み薬を出されることがよくあります。冠動脈の狭窄の程度が軽いものは血管拡張剤で症状が良くなることもありますが、いったん動脈硬化で細くなった血管は薬でその部分を治すことはできません。したがって症状が良くなってもその後の経過を考えると飲み薬だけでは十分でないことも多いわけです。狭心症が疑われる場合、専門の医療機関を受診して正しく診断した上で早めに適切な治療を受けることが大事です。しっかりした治療を受ければ多くの場合、普段の生活は発病前と同様に支障なく送ることができます。
 
心筋梗塞になったら病院に行くまでどうすればよいのでしょうか?
もちろん自分で心筋梗塞と診断することはできませんが、激しい胸の痛みが続いてむしろどんどん悪くなってきた場合、基本は安静にすることです。そしてもしまわりに誰もいない場合、家族など誰かにすぐ来てもらい、すみやかに救急車を呼んで病院に行くことが大事です。心筋梗塞では発病早期に命に関わるような不整脈が出ることがあり、そういった不整脈が出た場合、意識がなくなって間もなく死に至ります。AEDという電気的に不整脈を解除する器具で助かることも多いので、症状が我慢できるようなものでもまず誰かを呼んで速やかに病院を受診するよう心がけてください。
 
治療はどのようなものがありますか?
大きく分けて3つの治療法が挙げられます。先ほどお話しました血管拡張剤や血の塊、いわゆる血栓ができるのを防ぐ抗血小板剤などによる薬物治療、外科的に詰まった血管の先に他から持ってきた血管をつなげる冠動脈バイパス手術、そして細くなった冠動脈に対してカテーテルという細い管を使って小さな風船で広げる冠動脈インターベンション治療、これは昔PTCAと言っていたものですが最近はPCIと呼ぶことが多く、風船で広げた後、ステントという金属のチューブを冠動脈に埋め込む治療が主流となっています。
特に心筋梗塞ではいかに早く診断し、詰まった血管の血流を再開するかが患者さんの生命予後に大きく影響しますので緊急に心臓カテーテル検査を行って、そのままカテーテルで治療することが日本では一般的になっています。しかし十分な設備や体制の整った病院でしかこの治療はできませんので、迅速にカテーテル治療ができない状況では血の塊を溶かす薬を使う、血栓溶解療法も行われることがあります。特に米国などは、国土が広く救急搬送してカテーテル治療まで時間がかかることが多いことから現在でも血栓溶解療法が一般的に行われています。
 
治療した後は普通に生活できますか?
狭心症でカテーテル治療あるいはバイパス手術を受けた後、心臓の機能に問題がない場合は制限なく日常生活を送ることが可能です。散歩などで積極的に身体を動かすことは、心臓に負担となる体重増加を抑制し、さらに危険因子として糖尿病や脂質異常症などがある方のデータ改善のためにもよいことです。しかし心筋梗塞後、ある程度心臓の機能の低下を認める場合、その程度により心臓に負担のかかること、例えば山登りをしたり、ジョギングをしたりというのはむしろ危険なこともあります。心臓は走ったりすればそれに応じて体に血液を供給しなければならないので心拍数が上がって負担がかかります。その負担に耐えられなくなると心不全を引き起こし、肺に水が溜まって呼吸困難となります。心臓の機能がだいぶ低下していると言われた場合は普段の生活で息切れを感じるような動作をなるべく控えることが心不全の予防になります。担当医とよく相談して普段の生活でどの程度体を動かしていいか、ご自身で理解しておくことが大切です。
 
 
3. 狭心症、心筋梗塞のカテーテル治療

カテーテル治療とはどのようなものですか?
具体的には手首や足の付け根の動脈からカテーテルという細い管を心臓まで持っていって、X線の画像を見ながらガイドワイヤーという細くて柔らかい金属のワイヤーを目的の冠動脈に通し、動脈硬化で細くなったところをバルーンという小さな風船で広げ、必要に応じてステントという金属のチューブを埋め込むといった治療です。局所麻酔で行われ、特に手首から治療を受けた場合は治療後も歩けますので外科的なバイパス手術に比べて患者さんの負担は少ないという利点があります。入院期間も、病変の程度と施設にもよりますが一般的に2日ないし4日程度で済むことが多く退院後も専門的なリハビリなど必要ありません。翌日から仕事に復帰される方もいらっしゃいます。
これまではステントを入れても治療後数ヶ月で、治療した箇所がまた細くなる、再狭窄が大きな問題でしたが、数年前より再狭窄の原因となる新生内膜という組織の増殖を防ぐ薬がステントの表面に塗ってある、薬物溶出ステントが日本でも使えるようになり、再狭窄はかなり抑制できるようになりました。
 
日本はこの治療が盛んに行われているそうですが、どこでもこの治療を受けられるのでしょうか?
心臓カテーテルを行うための特殊なX線撮影装置や、それを行うことができる医師のいる病院でしかこの治療はできません。しかしほとんどの大学病院や循環器科を標榜している中小の市中病院あるいは民間病院で対応可能となるほどこの治療は普及しています。
 
カテーテル治療をやっている病院であればどこで受けても同じですか?
この治療は肘の動脈からも行われることがありますが、はじめにお話しました通り、多くは手首や足の付け根から行われます。もともとこの治療は足の付け根から行われており、1992年に世界で初めて手首からの治療が行われました。日本ではカテーテル治療の50%から60%程度が手首からの治療と言われており、現在世界でもこの手首からの治療、TRIと呼びますが、このTRIが普及している国のひとつです。しかし橈骨動脈という手首の血管は足の血管に比べて細いので、必然的に細いカテーテルを用いなければなりません。細いカテーテルは一般的に太いカテーテルより操作が簡単ではなく、腕の血管から大動脈にかけて非常に曲がりくねっていることがあり、操作が足からの治療に比べて難しい部分があります。したがって実際のところ簡単な病変を治療する時だけ手首から行うという施設が多いです。私たちのところでは治療が難しい患者さんも原則的にTRI、手首から治療を行っており、全体の90%以上がTRIで治療しております。特に長い時間安静が辛い腰痛をお持ちの方や、ご高齢の方からは手首から治療をすると大変喜んで頂けます。
また、どこから治療するにしても、治療対象となる心臓の血管自体極めて技術的に治療が難しいものもあります。カテーテル治療で対応できない場合は外科的なバイパス手術を選択することになりますが、患者さんの治療後の経過を考えた場合、どちらの治療もそん色なく、技術的に対応できるかどうかで治療が決められることもあります。もし手術が必要と言われ、どうしても手術を避けたい場合、セカンドオピニオンによりカテーテル治療で対応できる病院を探すこともひとつです。日本は世界でもカテーテル治療の技術が最も進んでいる国のひとつですが施設間というより術者間の差は否めません。
 
 
4. 狭心症、心筋梗塞にならないために

狭心症、心筋梗塞に一度なったらもうならないのでしょうか?
残念ながら2回目の発病を完全に防ぐことはできません。しかし迅速な診断とそれに基づいて適確な治療を行えば、再度発病しても大事に至る前に対応することが可能です。治療して症状がなくなっても医師の指示と服薬を守り定期的な通院をすることが大事です。
 
カテーテル治療ではその後治療したところがまた詰まったり、再発したりするそうですが、それを防ぐにはどのようなことを気をつければいいのでしょうか?
カテーテル治療は細いところに、多くはステントと呼ばれる金属のチューブを埋め込みますが、治療がうまくいってもその後ステントが急に詰まることがあり、ステント血栓症と呼ばれております。ステントの種類にもよりますが、ステントを入れた患者さんの1%程度は術後1年以内に詰まる可能性があります。金属は身体にとって異物ですのでほうっておけば血の塊、血栓ができてしまい、その多くは心筋梗塞の状態になり、最悪死に至ります。それを防ぐためステントを入れた患者さんは抗血小板剤という血が固まりにくくする薬を飲み続けなければなりません。入れたステントによりその内服期間は変わってきますので担当医の指示に従って服薬を守ることが大事です。また大量の汗をかいたり、下痢などで脱水症状になると薬を飲んでいても血栓ができやすくなります。治療後は適度に水分補給することを心がけることも必要です。
血栓だけではなく、ステントを入れても治療後数ヶ月で、治療した箇所がまた細くなる現象である再狭窄が大きな問題であり、数年前まで治療後2割ぐらいの患者さんが再発を認めておりました。しかしその後再狭窄の原因となる新生内膜という組織の増殖を防ぐ薬がステントの表面に塗ってある、薬物溶出ステントが日本でも使えるようになり、再狭窄はかなり抑制できるようになりました。それでも5%程度は再発を認めます。糖尿病や、高血圧など動脈硬化の危険因子をもっている方はそれぞれのコントロールを厳格にすることが再発の予防につながります。
 
狭心症、心筋梗塞にならないためには普段どのようなことを気をつければいいのでしょうか?
今お話した通り動脈硬化の危険因子をなくす、あるいは十分コントロールすることはこの病気にならない、一度なっても2回目の発病を防ぐ上でも大事なことです。普段から定期的に健康診断を受診してご自身の動脈硬化危険因子を把握した上で、過度のカロリー摂取や油物を避け、適度な運動、まずは歩くこと、例えばエレベーターなどを使うようなところで階段を使うなど普段のちょっとした心がけでできることから始め、それを継続することが大事です。